カメラのキタムラ129店閉鎖の衝撃。街の写真屋を殺したのは誰か

 

ただ、スマホの販売は順調にはいきませんでした。スマホの製品としての本質はカメラではなく携帯電話端末だからです。カメラを販売するための知識とスマホを販売するための知識は大きく異なります。カメラに慣れた既存の従業員では対応しきれず、スマホを販売できる従業員の採用が必要になりました。

このことが人件費の上昇を招いてしまいました。売上高に占める「給与及び手当」が占める割合は次第に上昇していきました。2008年3月期では8.8%でしたが、2016年3月期は12.2%にまで上昇してしまいます。右肩上がりで上昇していきました。人件費の上昇が経営を圧迫するようになりました。

スマホの販売に関しては、2016年4月に総務省が発表した「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」により「端末実質0円」販売を事実上認めない方針が示された影響も見逃せません。MM総研によると、2016年4~9月のスマートフォン出荷台数は前年同期比8.4%減の1,216.8万台となっています。「端末実質0円」によるスマホの販売不振はキタムラをも直撃しました。

製品販売については結果論ですが、ヨドバシカメラやビックカメラのように、カメラ製品にこだわらずに家電量販店の道を歩んでいたらまた違った結果になっていたでしょう。カメラ製品主体のキタムラはカメラ市場の衰退により苦境に立たされることになりました。カメラ市場に翻弄された形です。

キタムラはカメラ製品の販売に加えて写真のプリントも収益の大きな柱です。しかし、プリントも不振にあえいでいます。2008年3月期のプリントは前年比31.9%増の563億円もありましたが翌年から低迷し、2016年3月期には425億円にまで落ち込んでいます。

プリントの不振はリーマンショックが大きく影響しましたが、もう一つの理由として見逃せないのがSNSの普及です。フェイスブックなどのSNSの普及により写真をプリントする機会が激減しました。SNSでシェアすることで済むため、プリントの必要性が低下したためです。

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