トランプの「アメリカ第一主義」が日本の政権運営に不都合な理由

 

日本の政権運営にとって不都合なトランプ政権

米政治の大転換はG7諸国に動揺を与えていて、これは日本にとっても都合が悪い。日本のメディアからは、「トランプ氏は安倍氏の『日本を取り戻す』を追随」との声も聞かれるが、自国グローバル企業の繁栄を国益と位置付けている政治と、グローバル企業に向かった富を「市民へ取り戻す」とする政治に何ら接点はない。グローバル企業や中銀との関係再構築へ向かうトランプ政権と、それらとの関係維持を重視する政権とでは、その政治理念、目的は真逆である。

日米政治の要は経済であり、両国経済の要はやはり、政権とグローバル企業中銀との蜜月な関係にある。それが互いに逆方向にあることは、政治上の重要な接点を持たないことを意味する。それは、両国の覇権ツールである日米安保開銀等のあり方に変化が訪れることを予見させる。トランプ氏の当選以降、日本政府は世界に類を見ない慌ただしさで、その対応に迫られているようである。

ただ最終的に、トランプ氏の狙いとは裏腹に、内向きな政治がどこまで実現可能かは未知数である。また、これまでの女性蔑視、人種差別的な発言も撤回して謝罪し、人々の融和を目指さない限り、米大統領としての役割に限界が訪れる日がくるはずである。イスラエル・パレスチナ問題への対応も含め、世界はこれらを見極める必要がありそうだ。

最後に、強い国家像、トリクルダウンを掲げるアベノミクスは30年前のレーガノミクス踏襲である。そして、そのような全体主義から距離を置くのがトランプ氏のアメリカ(米市民)ファーストであり、日本でも昨年の夏ごろからか、小池氏が都民ファースト」としてカバーし始めている。市民生活第一を掲げ、淡々と目指す方向へ権力を行使する両氏の政治姿勢はよく似ている。「私こそがあなた方の生活を守る」といった押しの強さもさることながら、その先にある「世界・全国リード」を狙う両者の政治には重なる部分が少なくない。

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誤解のないように書き添えると、私の中でオバマ氏は最も好印象な米大統領であった。ただそれとは別に、オバマ政権下では史上最悪までに富の格差が拡大し、金融・不動産市場は高騰を続けた。持たざる者はさらなる苦境に陥り、逆に往年のエリート層はこの上ない優位な蓄財環境を謳歌している。また、オバマ政権下で行われた空爆は途方もなく記録的な数に上る。結局、オバマ氏は与えられた権力を行使し切らず、大筋でブッシュ政権の路線を踏襲、拡大させたようである。最終的に、トランプ政権下では米国による空爆戦闘の数は減るだろうと私は見ている。

image by: Michael F. Hiatt / Shutterstock, Inc.

 

『グローバル時代、こんな見方も...』

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グローバル時代、必要なのは広く正しい世界観。そんな視点に立って私なりに見た今の日本の問題点を、日本らしさの復活を願い、滞在先の豪州より発していきたいと思います。

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