第二次安倍政権発足後、再稼働推進の政策を意識し審査に手ぬるさが感じられた規制委のメンバーも、これではさすがに怒りを隠せない。
ひとしきりのやりとりの後、2014年には耐震性不足が明らかになっていたとを確認したうえで更田委員がこう語った。
これまで私たちが受けてきた説明とは著しく異なる。これを知ったうえで今までの免震棟の説明をされていたんですか。
これに対し東電側は「社内での連絡が不足していた」と言い訳する。ウソを言え、隠してたんだろ、というのが委員たちの正直な思いだったのではないだろうか。
それでも、社内の連絡不足という説明を受けて、更田委員は「建設側とプラント側がうまくコミュニケートしていますか」と問いただした。
もちろん、かねてから指摘されていた通り、そういう面はあるだろうが、部門どうしのコミュニケーションの悪さというだけでは、やや矮小化された感は否めない。
福島第一の国会事故調査委員会がまとめた報告書に、東電の組織的体質について言及した部分がある。
東電は、エネルギー政策や原子力規制に強い影響力を行使しながらも、自らは矢面に立たず、役所に責任を転嫁する黒幕のような経営を続けてきた。
東電にはいまだにこの「感覚」が残っているのではないか。規制当局を操って、規制を骨抜きにし、少しでも原子力発電のコストを安く抑えようとする。柏崎刈羽の免震棟に十分な耐震性がないことをおおっぴらにすれば、設計のやり直しやダンバーの開発などでさらにコストと時間がかかる。
国会事故調報告書には次のような記述もある。
東電では、近年「コストカット」及び「原発利用率の向上」が重要な経営課題として認識されていた。そのため現場に対しては、「安全確保が最優先」と号令をかけているものの、その一方で、安全確保と経営課題との間で衝突が生じていた…安全リスクへの対応に莫大なコストが見込まれる場合や、稼働率を低下させる懸念がある場合については、リスク想定の引き下げ、規制や指針の緩和、施策の先延ばしなどの方法で対処する方針がとられていた。
こうした東電の姿勢が、地震・津波のリスクに警鐘が鳴らされながらも、対策をおろそかにしてきた原因であろう。今回の免震重要棟の耐震性不足についても、本来なら、判明した2014年の時点で対応策を講じるべきであった。
「審査している人がおちょくられている感じ」。後日の会見で、規制委員会の田中委員長は不快感を示した。
重症ですね。以前からの体質が残っているとウチの職員も言っています。信義に反する。