ドイツが中国に急接近。隠しきれなくなってきたEUの焦燥感

 

なぜトランプさんは、「反EU」なのでしょうか?

トランプ氏のEUへの懐疑心は強い。「EUは部分的に貿易で米国に打撃を与えるために創設されたんじゃないのか?」とライバル視し、「EUがばらばらになろうが、団結しようが、どうでもよい」と言い放った。
(同上)

EUはアメリカに打撃を与えるために創設された」。このトランプ見解、実は正しいのです。1991年末、ソ連が崩壊し、東欧が解放されました。この大事件は、独仏を中心とする西欧にとって大きな意味があった。つまり、「東の大脅威(ソ連)が消えたのだから、もはやアメリカに守ってもらう必要はない!」。

もう一つは、「EUを東に拡大し、共通通貨(ユーロを基軸通貨化すればEUはアメリカに匹敵する勢力になれるのではないか!?」。そんな野望が、欧州エリートの中に出てきた。

プロジェクトの中心にいたのは、フランスとドイツです。というわけで、トランプさんが「EUはアメリカに対抗するために創られたのではないか?」というのは、その通り。ただ、だからといって普通は、「EUがバラバラになっても、どうでもいい!」とは言いません。率直すぎるので、不必要に警戒され、恐れられ、敵が増えていきます。

風当たりを受けるのはドイツだ。「EUはドイツの目的のための道具」とこきおろし、独自動車大手BMWにはトヨタ自動車同様に、新設を計画するメキシコ工場で製造した自動車を米国で販売する場合、「35%の税金を課す」と脅しをかけた。

 

ドイツは輸出大国だ。独Ifo経済研究所のフェスト所長は「輸入を減らし、国内製造業の雇用を創出するトランプ氏の目標は明確」とする一方、「大きな貿易黒字を持つドイツはスケープゴートにされる可能性がある」と警戒心を強めた。
(同上)

EUはドイツの目的のための道具」。こういう見方の人が増えています。たとえば、「予言者」エマニュエル・トッドさんは、EUのことを、「ドイツ帝国」と呼んでいる。

「対米貿易黒字」で批判されるドイツ。日本と立場は似ていますが、日本とドイツでは、違うところもあります。トランプさんは、中国に対抗するため、どうしても日本と仲良くしなければならない。そのため、経済問題は最重要ではない

一方、「中国に対抗するためにドイツと仲良くする」という話にはなりません(距離が遠い)。欧州最大の脅威はロシアなので、「対ロシアでドイツと仲良くする」という話はあり得る。しかし、トランプさんは、ロシアを脅威と認識していないのです。

そんなわけで、日本は「中国ファクターのおかげでバッシングを逃れている。ドイツは、「ロシアファクターが緩んだことでバッシングの対象になっている

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