話し合いは?
こういう場合、まず出てくるのが、「話し合いましょう」です。しかし、うまくいく可能性は非常に低い。なぜ? 金正恩は、「アメリカが核をもたない独裁者にどう接してきたか知っている」からです。
イラクのフセインやリビアのカダフィは、殺されました。シリアのアサドは、徹底抗戦してなんとか生き残っている。しかし、アメリカが、「隙あらば殺してしまえ」と思っているのは明らかです。というわけで、金正恩が「核兵器破棄」に応じるとは思えない。
そして、アメリカサイドも、金正恩と「交渉できない」ムードになっています。「VXガスを使って、自分の兄を殺すような狂人と交渉できるか!」と。というわけで、「話し合いでの解決」は、望み薄です。
クーデターは?
再びWSJ3月2日を見てみましょう。
米政権、北朝鮮への武力行使も選択肢に
ウォール・ストリート・ジャーナル 3/2(木)8:42配信
北朝鮮による核兵器の脅威に対応するため、トランプ米政権が武力行使や政権転覆などの選択肢を検討していることが分かった。
「政権転覆」。これは、「クーデターを起こして金正恩政権を打倒する」という意味。アメリカの「得意技」と言われています。
たとえば、03年のグルジア革命。04年のウクライナ革命。05年のキルギス革命。14年のウクライナ革命。これらは、「アメリカのサポートで実現した」といわれている。実際、革命で失脚した、シェワルナゼ元グルジア大統領、アカエフ元キルギス大統領、ヤヌコビッチ前ウクライナ大統領は、「アメリカにやられた!」と断言しています。
とはいえ、北朝鮮のような「ほぼ完全鎖国国家」に、アメリカが「クーデター基盤」を築けているとは思えません。これも、難しそうです。
国連安保理は?
話し合いもダメ。クーデターもダメ。そこで、いよいよ「戦争」の話が出てきます。
アメリカが「合法的」に戦争しようとすれば、一番いいのは「国連安保理」から武力行使の「お墨つき」を得ること。ところが、これが「得られない」のです。なぜ? 中国とロシアが、必ず「拒否権」を行使するから。
自衛権行使は?
今の国際法では、「合法的な戦争」が二つあります。一つは、「国連安保理が承認した場合」。もう一つは、「自衛権の行使」。ここには、「個別的自衛権」「集団的自衛権」の両方が含まれます。「自衛権」というのは、「先に攻撃されたから、反撃する」というのが一般的。たとえば、「日本が真珠湾を先に攻撃したから、アメリカは戦争を開始した」(ルーズベルトが云々という話、今回は省略します)。ちなみに「9.11」後の「アフガン攻撃」も、「自衛権行使」と説明されました。
ところが、今回の場合、「北朝鮮が、『将来』核を搭載した大陸間弾道ミサイルでアメリカを、『攻撃する可能性がある』」というのが、攻撃理由。「まだ攻撃されてないのに、自衛の権利がある」というのを、「先制的自衛権」といいます。これについては、「ある」「ない」で解釈がわかれている。ですから、アメリカが今北朝鮮を攻めたら、「絶対的な正義の味方」にはなれないでしょう。