【書評】渡辺俊介を一億円選手にした「1センチ1000万円」思考法

 

アンダースロー投手の左足の上げ方は、みんなそれぞれ特徴があってバラバラなのに、コントロールの良いアンダースロー投手はみんな、どんな上げ方をしても、同じ左足の下ろし方をしていた。早速ブルペンで試してみると、コントロールが安定し、そこからはスピードへのこだわりが消えて、タイミングを外したり、打たせて取ったりする技巧派の投手へと変貌していき結果を出していった

アマチュアのピッチャーの多くは足を上げた後、後方に上体を捻ってから投げるが、プロでは身体をしっかり横向きにしながらバッターの方に移動できなければ通用しない。下半身が後ろの足から前の足に体重移動する時上半身も一緒に移動するのが最も力が球に伝わるが、バッターは簡単にタイミングを取ってしまう

だから、上体を後ろに残したまま股関節と膝をやわらかく使って下半身だけを前に移動することで、その前後の間はバッターからほとんど見えないので、その間によってバッターはタイミングを崩す。スピードガンの表示は遅いのに、打球が詰まるようなピッチングができるようになる。その間は、オーバースロー投手よりも、膝をより前に突き出せるアンダースロー投手の方が長く取ることができて有利である。

しかも渡辺投手は、パワーもないし足も遅いが身体のやわらかさだけは子供の頃から群を抜いており、股関節も他の投手に比べてやわらかかった。両膝と股関節で、上半身と下半身の移動の間を作る。それを自在に使えるようになってから、渡辺投手は見違えるほどに結果が変わっていった。

渡辺投手は寮長で投手コーチの池田重喜氏に、「投げ出すときの左膝の位置が、1センチ1,000万円だと思ってやれ」と言われた。左膝を1センチ前に出して投げられるようになると1,000万円ずつ給料が上がる。

実際に渡辺投手は、プロに入った直後に比べて左膝を10センチは前に出せるようになり、給料もそれぐらい上がった。左膝が10センチ前に出れば、ボールを10センチ前で離すことができるからそれだけバッターにタイミングを崩せるのだ。

こうして、大きく制球力を手にした渡辺俊介投手は球界屈指の技巧派アンダースロー投手となり、千葉ロッテマリーンズの31年ぶりの優勝やWBCの日本代表チームの優勝に大きく貢献した。

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