誰も鉄道を求めてない。国土計画の失敗が招いたJR四国の経営危機

 

一方で、四国の消費者、特に徳島県や香川県が顕著ですが、この2県の場合は、架橋によって神戸大阪との距離がグッと縮まったのです。その結果として、少しまとまった買い物をするという場合は、バスで梅田に出てしまうというのが「当たり前」になってしまいました。その結果として、徳島や高松の百貨店や専門店は大打撃を受けるに至りました。

更に四国の中は、全島を縦横に走る高速道路網ができており、廉価な高速バス網も便利になっています。その結果として、鉄道よりバスというカルチャーが成立していますし、近距離利用ということでは温暖な気候ゆえに365日問題のない軽四モータリゼーションが大発達するに至っているわけです。

もう一つ大きな要素は航空です。高知も松山も、羽田との航空ネットワークで東京と結びついているわけで、仮にフリーゲージが実用化されて、岡山から新幹線が四国に入ってくるにしても、東京直通などということにはニーズがそもそもないと思います。

JR北海道の場合は、確かに厳冬期の過酷な環境、あるいは寒暖の差による設備維持の苦労などがある反面、「冬こそJR」という優位性や期待はあるわけです。ですが、JR四国の場合は、そうではなくて通年を通じて、架橋のストロー効果、高速道路網、航空路線網、モータリゼーションとの競合に晒されているのです。

鉄道事業者としては何とも厳しい環境というわけですが、こうなるとJR四国がどうのとか、有識者会議がどうとかいうレベルを越えている話だと思います。時は正に民営化30周年を迎えているわけですが、JR四国の問題というのは、要するに国土計画の壮大な失敗としか言えない感じがします。

image by:MrNovel / Shutterstock.com

 

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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