【書評】従業員を愛し当たり前を排す。あるバス会社が起こした奇跡

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北の大地を走る、とあるバス会社が起こした奇跡をご存知でしょうか。今や全国からの視察が相次いでいるという「十勝バス」の快進撃を記した一冊が、無料メルマガ『ビジネス発想源』で取り上げられています。経営悪化による廃業の危機から不死鳥のごとく蘇った同社の再建策とは?

みんな意外に知らない

最近読んだ本の内容からの話。

1997年8月、33歳の野村文吾氏が務めている札幌プリンスホテルに、帯広市から父が突然来た。父は帯広市内を走る十勝バスの3代目社長だが、長年の経営悪化のために会社をたたむ決意をし、先代社長が一存で所有する株式を孫の野村氏に相続させたため、筆頭株主になっていて、その会社精算の了解をもらいに来たのだった。

家業を継ぐ気がなくホテルに勤めたはずなのに、バスがなくなった後の故郷の街の人たちが心配になった野村氏は、職場に辞意を申し出て、翌年、経営企画本部長として十勝バスに入社した。

当時の十勝バスは、マイカーの普及に伴い1969年をピークに利用者が年々減少し、最大2,300万人いたバスの利用者は、1998年にはピーク時の40%にまで落ち込んでいた

バスは地域住民にとって不可欠な「足」なので国や自治体から赤字を補助金で補填してもらえるが、利用者があまりにも少ない路線は、補助金の支給の対象から外されてしまう。便数を少なくして対応するしかなく、便数が少なくなると、さらに不便になり、年々、利用客は減少の一途をたどった。

そして従業員のリストラが起き、労使交渉で毎年のようにストライキに発展した。労使関係も最悪で、経営者として入社した野村氏は、従業員たちからなかなか信用してもらえず、また、自分自身も従業員を信用できず、打ち解けられずに経営改善は長らく成功しなかった。

やがて、野村氏は自分の過ちに気付いて、従業員を愛することを決意して一人一人と向き合い、次第に従業員たちと打ち解け合うようになり、2003年、十勝バスの社長に就任した。

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