てるみくらぶは、どこで失敗したのか? 格安旅行会社の異常な実態

 

格安旅行のビジネスモデルを確認します。旅行代理店は航空会社から個人向けの割安航空券を仕入れ、売り上げに応じて支払われる販売奨励金(キックバック)の分を値引きして販売します。この方式では旅行代理店は商品自体に付加価値をつけることが困難です。行きたい旅行先の航空券があるかないかが利用者にとっての最大の価値となるためです。旅行代理店に最も求められることは、価格以外では「仕入れ力品揃え」になります。

販売力がある旅行代理店は販売奨励金が優遇されます。そのため、販売力のある旅行代理店は販売奨励金を還元する形で低価格で航空券を販売することができます。付加価値がつけづらいビジネスのため、低価格で販売し品揃えが豊富な旅行代理店に消費者は集まります。消費者が集まる代理店は航空会社からの販売奨励金が優遇されます。規模が大きくなるため、品揃えも豊富になります。こうしたサイクルが強く働き、かつ利益率が低いという業界の特徴もあるため、中堅以下の代理店では利益を確保することが難しいのです。

格安旅行の先駆けといえばHISでしょう。今でこそ珍しくない格安航空券ですが、もともとは違法商品とも言えるものでした。世界の主な航空会社が加盟するIATA(国際航空運送協会)が航空運賃の下限を設定し、それを下回った金額で販売することを禁じていたのですが、HISはそれに異を唱える形で格安航空券を販売していきました。

こうした経緯からも分かる通り、旅行商品は基本的に価格が決め手になる特徴があります。一方、消費者の旅行ニーズの多様化などにより、価格以外の付加価値も求められてきています。穴場の観光地や現地の最新情報といった付加価値情報を提供できるかが問われる時代にもなっています。ホテルやレストランなどは次々に開発され、入れ替わっていきます。そういった現地の情報をリアルタイムで提供できるかが問われています。

HISは旅行事業において国内294拠点、海外66カ国141都市232拠点のネットワークを誇ります(2017年1月末日時点)。ネットワークを生かして現地の情報を素早くキャッチアップすることで、価値がある情報を提供することができます。安いホテルの空き部屋があればその情報をいち早く消費者に提供できるので、ホテルの空き部屋を低価格で販売するといったこともできます。

旅行商品の付加価値という点ではJTBも外すことはできません。例えば、町おこしに成功した地域を実際に訪ね、その成功事例を学ぶといった旅行を取り揃える「地恵のたび」という旅行商品を扱うなど、付加価値のある旅行を提案しています。

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