中国の領海侵犯は本当か? 海保も認める「暗黙のルール」を徹底検証

2017.04.04
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「中国包囲網」という時代錯誤

安倍首相の、ほとんど口癖になっている決まり文句は、こうである。

日本を取り巻く安全保障環境はますます厳しくなっている。中国の公船が尖閣の我が国領海を頻々と侵犯し、また南シナ海では不法な軍事建設を進めている。我が国は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配などの価値観を共有する米国始め各国と協力して平和と安全を守っていく。

裏返せば、そのような価値観を(永遠に?)共有できない中国の台頭は食い止めなければならず、米国との同盟を中心に、その他の「民主主義国」をも結集して「中国包囲網を形成して封じ込めていくということである。

しかし、まず「日本を取り巻く安全保障環境はますます厳しくなっているというのは本当かどうか。「何を言ってるんだ。北朝鮮がミサイルをブッ放しているじゃないか。中国艦船が尖閣海域や南シナ海でウロウロしているじゃないか!」という感情論やアジテーションでは国家戦略は立ち上がらないので、どのように「ますます厳しく」なっているのかを1つ1つ落ち着いて検証していく必要がある。

それがなかなか難しいことで、例えばこれがいま売れている劇画『空母いぶき』(写真)。ある日突然、尖閣に遭難漁民を装ったと見られる中国の工作員3名が上陸して中国国旗を掲げる。それを合図に中国の海兵と空挺部隊が与那国島と多良間島を急襲してたちまち制圧、住民を人質にとって尖閣に対する中国の領有権主張を認めるように迫る。それに対して海上自衛隊の垂直離発着の戦闘機を搭載した空母が雄々しく立ち向かって行く……というお話で、『沈黙の艦隊』で知られる劇画家かわぐちかいじの最新作である。

制海権・制空権をめぐる両軍の駆け引きとか海空戦闘場面の描写にはそれなりのリアリティがあったりもするが、肝心の中国が本当に尖閣・与那国の電撃的占領という作戦に出て来るのかどうかについては、「自明の前提のように扱われて、何ら検討の対象とされないので、そこに関しては全くリアリティがない。そのため、「あ、中国って、こんな風にいきなり尖閣に攻めてくるんだ」と恐怖心を煽るのに大いに貢献し、安倍政権による中国が怖いキャンペーンに手を貸す結果となっている。

こうした日本における「中国脅威論」の隆盛に、中国の王毅外相は3月8日、全人代での記者会見で「日本には依然として(中国に対する平和と対抗の)2つの路線の間で揺れ動き、歴史を逆戻りさせようと企む者がいる。我々は日本と関係改善したいが、日本はまず自らの心の病を治し中国の発展を理性的に受け止めるべきだ」と述べた(写真)。

これが日本人が罹っている「心の病」だという指摘には、残念ながら頷かざるを得ない。

そこで、この心の病の治し方について、5つの章に分けて順を追ってお話しすることにしたい。

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