日本人「みんな仲良く」、韓国人「俺が俺が」、違いはどこから?

 

「おでん屋三代」に驚き

一方、負け組に対しては露骨な蔑視が当然とされる。黒田氏の行きつけの韓国料理屋の女主人は、業界団体の視察旅行で日本に行った時の経験をこう語った。

たしか京都のどこかのお寺でした。見物したあとバスが出るまですこし時間があったので、お寺の近くをぶらぶら散歩していたら、路地裏に小さな「おでん屋」があったので、何人かで入ったんです。韓国にもそのまま「おでん」という名前であるんですが、日本で食べたのはうまかったですねえ。おでんがあんなにおいしいものとは知らなかった。

 

ところが、わたしたちが驚いたのは、その何の変哲もない小さなおでん屋が、何と三代にわたってやっているというんですね。三代というと100年ですよ。驚きましたねえ。我が国だと屋台をすこし大きくしたようなおでん屋などは、つまらない商売ですから親子三代なんか決してやりません。そんなものに一生をかけるなんてことはありません。小金をためて、できるだけ早くやめたいと思っていますね。

 

それと、やはり日本は安定社会だなあとつくづく思いましたねえ。おでん屋を同じ場所で三代も続けているというのは、社会が安定しているということではないでしょうか。
(同上)

「つまらない仕事を親子何代もやっているのは恥ずかしい」

この話で黒田氏が思い出したのは、KBS韓国放送公社)のテレビで親子何代にわたって同じ仕事を続けている職人を紹介する番組を作ろうとしたが、何度募集しても応募がなかった、という話である。この女主人はこう謎解きをした。

韓国にももちろん職人はいるし、親子何代でやっている人たちも、日本ほどではないければいると思います。ただ、テレビで紹介するといった場合、ひょっとすると恥ずかしがって出ないかもしれませんよ。わたしたちには、出世せずにつまらない仕事を親子何代もやっているのは恥ずかしい、という思いがあります。とくに食べ物屋なんか自慢になりませんからね。
(同上)

日本は創業100年を超える老舗企業が10万社以上あると推定されている「老舗企業大国」である。おでん屋を三代にわたってやっているというのは、我が国では尊敬されこそすれ、「恥ずかしいこと」などと思う人はいないだろう。

「われわれを登場させると本の品位が落ちる」

韓国における「賤業蔑視」の話をもうひとつ。ソウル特派員時代、黒田氏は『韓国人あなたは何者か』というタイトルの韓国語による評論集を2巻出版し、合計10万部近く売れるベストセラーとなった。読者から多くのおたよりが来たが、その9割が好意的なものだった。

しかし、名門・梨花女子大のある学生は「著者は飲み屋のアガシ(娘さん)の話ばかり引用しているが、何故われわれに話をきいてくれなかったのか」と怒っていたそうである。韓国社会を語るのに、自分たちのようなエリートをさしおいて無教養で下賤な飲み屋のホステスなんぞに語らせたということで、いたく誇りを傷つけられたのだった。

同様に、飲み屋のホステスたちも「クロダ氏、今後、韓国で本を書くときはわれわれを登場させてはいけない」と口を揃えて言った。「われわれを登場させると本の品位が落ちひいてはクロダ氏の品格が問われることになるので、やめた方がよい」という親切心からだった。

銀座のバーのマダムたちが書いた本が何冊も出版されているわが国とは、根本的に事情が異なるのである。

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