トランプのシリア爆撃、たった2枚の写真に騙された可能性

 

ガバード上院議員との関係は?

これに関連して興味深いのは、トゥルシー・ガバード上院議員写真とトランプとの関わりである。

ガバードは、女性兵士としてイラク戦争に2度従軍し、その後ハワイ州から出馬して当選、軍事委員会・外交委員会で活躍する民主党の花形で、30歳代前半で同党の全国委員会副委員長にまで祭りあげられた。しかし、昨年の大統領選ではその職を辞して、サンダース陣営にはせ参じスポークスパーソン役を演じた骨太のリベラル派である。

彼女はシリアに関しては、米国が反体制派を支援してアサド政権打倒を目指していることに一貫して反対し、そのようなCIAの工作を禁止する法案も提出した。トランプはそのような彼女の活動を評価していて、昨年11月には国連大使候補の1人として面談、その際にシリア情勢についても突っ込んで意見を交わしたと見られている。その際、なぜ民主党議員がトランプと会うのかを問われた彼女は、「ネオコンが我が国を戦争に引き摺り込む前に、彼と面会する機会を持つのは大事なことだ」と答えている。

これは実は重要発言で、彼女はネオコン的勢力がシリアで米国を戦争に引き摺り込む危険を察知していたのだと考えられる。

その後、今年1月にガバード議員は個人的にシリアを訪問してアサド大統領と面談した。そこから先は霧に包まれている部分も多いのだが、アサドの立場に近いとされるレバノンの新聞『アル・アクバル』の編集局長イブラヒム・アル・アミンが3月30日付の一面トップ記事で書いたところによると

ガバードはトランプからの伝言として

  1. トランプはアサドの排除よりISの駆逐を最優先しており、この件でアサド政権と協力して対処したい
  2. イランがテロ組織と真剣に戦っていることを評価する
  3. シリアに対する制裁解除は時間を要する

──などの見解を伝えた。

また、彼女がトランプと電話会談するつもりがあるかを尋ねると、アサドはすぐにOKし、直通の電話番号を伝えた。

アサドは、前オバマ大統領の命令によってアメリカの秘密工作員がシリア内のテロ組織支援にかかわった証拠を持っている、と彼女に告げ、彼女は滞在日程を延ばしてアサドと再会談してその資料を受け取った。

この報道についてハフィントン・ポストから問われたガバードは、アサドに会った際にトランプからのメッセージを伝えたというのは事実無根だと全面否定した(4月3日付同紙)。

真偽のほどは不明だが、もしレバノン紙が書いているようにアサドが彼女に米CIAなどの反体制派支援の実態についての資料を手渡したのであれば、なおさら彼女はこのやりとりを全面否定せざるを得ないだろう。逆に反体制派やCIAおよびネオコン系の陰謀集団、その周辺にうごめく戦争ビジネス企業などにしてみれば、トランプがそのアサド文書を武器に彼らの所業を暴露し潰しに掛かってくる危険が切迫していたことになる。

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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