いわゆる「口下手な人」はマシンガントークでぐいぐい押すようなタイプに比べて交渉が苦手―。そんなイメージを持たれている方も多いかと思います。ところが…、今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、著者で現役の弁護士でもあり、ご自身も「口下手なほうだ」と感じているという谷原誠さんが、「口下手のまま交渉の達人になれるコツ」を紹介しています。
口べたの交渉術
こんにちは。
弁護士の谷原誠です。
「自分は交渉が苦手だ」と考えている人は、得意だと考えている人より多いのではないかと思いますが、その理由として「私は口下手だから…」というのをよく聞きます。たしかに「交渉がうまい人」と聞くと、立て板に水のようにぺらぺら話し、相手を圧倒してしまう人というイメージがあります。
口下手な人は、セールスマンにマシンガントークで押し切られたり、交渉の席でほとんど何も話せず、相手の要求を飲んでしまった、などといった苦い思い出から、交渉が向いていないと自己認識している場合も多いでしょう。
しかし、「口下手」と、「交渉下手」は違います。
私の周りの弁護士も、どちらかというと口下手でも、交渉でよい結果を残す方がたくさんいますし、私自身も、それほど自分が口がうまいと思ったことはありません。
口下手な人の多くは、交渉で相手ばかり話していると「押されている、負けている」と思い、慌ててしまいます。そして、こちらも何か言わなければ、と不用意な発言をして、自分で納得しない合意をしてしまう場合が多いようです。
交渉において、このような「勝ち負け思考」は禁物です。交渉は双方が納得できる形で合意するものであり、そこに勝ち負けはありません。何らかの合意に達しなければ、いくらしゃべりまくっても意味はありません。
口下手な人は、押されているように感じられても、その状況に慌てることなく、自分が主張したいところで、すべき主張をすればよいのです。何を言ってよいかわからないのならば、無理に話さず、黙っていてもよいのです。
しゃべりまくっても自分の思う結果が得られない場合、今度は相手が慌ててきます。だんだん話すこと、自分が切ることのできるカードがなくなってくるからです。