これは憶測になってしまいますが、『スター・ウォーズ』の場合はもしかしたら「ファンの気持ちを最大限忖度しておけば間違いない」という感覚があったのかもしれません。もちろん『ローグ・ワン』がたまたまそういう作品だったという可能性はありますが、しかしルーカスであれば絶対にやらなかったであろう、一種の「ファン・フィクション」としての『ローグ・ワン』がヒットしたので、その影響は今後のシリーズにも確実に及ぶと思っています。
——ただ、今後出る『スター・ウォーズ』の新作が一転して、映画作品としてのあるべき姿である「前へと進む作品」になっている可能性も、なきにしもあらずっていうことでしょうか?
高橋:どうでしょうか。本家のシリーズとスピンオフ的な作品で使い分けるという可能性はあると思っていますが、どうなることやら……ただ、僕は『007』シリーズも大好きなんですが、「『007』こそ、毎回同じじゃないの」と言われたら返す言葉もみつからないです(笑)。ただ『007』は、少なくとも以前は一話完結型だったので、ちょっと状況が違うということはいえます。
というか、リメイクやリブートばっかりになってしまった今の映画界の状況にも当然問題はあるわけです。21世紀になって『スター・ウォーズ』と『ゴーストバスターズ』と『ゴジラ』と『ジュラシック・パーク』の新作が次々と公開されるなんて、まったく予想していませんでした。
——そういう風にリメークやリブートばかり出てくるというのは、映画業界全体が新しいものを作り出すことに、及び腰になっているということなんでしょうか?
高橋:そうですね。リメイクやリブートだと、映画にお金を出す人や会社を説得しやすいんです。過去作があれば「こういうことをやります」ということがすぐに伝わるので。でもオリジナルの脚本を持っていって「こういう新しい世界観を示す映画をやりたいんです」といっても、それはなかなか伝わらない。
有名な話ですが、『マトリックス』も製作に至るまでには、内容が理解してもらえなくてとても苦労したそうです。だからコミックのアーティストに詳細な、ほとんどマンガのようなストーリーボード(絵コンテ)を描いてもらって、それを見せながら説明するということを丁寧にやって、ようやく分かってもらえたという。
当たるか当たらないかわからない映画を、大金かけて作るということは一種のギャンブルです。ただ、ギャンブルであっても、お金を出す方はなるべくリスクを軽減したいわけです。それをどんどん推し進めていくとリメイクやリブートが安全パイに思えてくるのも仕方のないことかもしれませんが、リスクはあっても新しいものにチャレンジしてほしいなとは強く思います。