北朝鮮危機は回避されていた。犬猿の米中が分かり合えた複雑な事情

 

平和協定への道筋

北京からの情報では、帰国した習近平は早速、金正恩との水面下での協議を始めているという。その内容は恐らく、

  1. 北が早急に(3カ月以内に)核放棄の意思を表明せよ
  2. そうすれば、米国は北に対する軍事攻撃も体制転覆も行わない(従ってまた中国による宮廷クーデターも執行されない)ので、金正恩の命は保証される
  3. 経済制裁の解除と経済援助の提供も行われる
  4. その上で、休戦協定を平和協定に置き換えるための交渉を開始し、それと並行して米朝国交樹立の交渉も開始する

──といったものだろう。必ず上手く行くという保証はもちろんないし、紆余曲折もあるに違いないが、北朝鮮と金正恩が生き残るにはこの道しかないことは明らかである。

そういう時に、安倍政権はまるで、米軍が先制攻撃に出て大戦争になることを期待しているかのような姿勢を示している。安保法制を初適用して自衛隊が米軍と共に北と戦う態勢をとり、そうなれば当然、日本にも北のミサイルが降ってくるのは避けられないので、そうなったら「地面に伏せろ」「窓際から離れろ」とか国民に呼びかけている。

日本がこの局面でなすべきことは、戦争になって何万・何十万・何百万の北朝鮮・韓国・日本・米国そして中国の人々が命を失うようなことにならないよう、全力を尽くすことであるというのに、安倍首相は戦争になるのを期待しているかのようにはしゃぎ回っている。韓国の朝鮮日報は18日の社説で、日本の公職者たちは「まるで隣国の不幸を願い、楽しむような言動」をしていると非難している。

 

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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