30年ひたすら増収増益。ニトリの「異常すぎる」快進撃の背景

 

ニトリのビジネスに最も影響を与えるもの

確かにニトリの快進撃には、卓越したビジネスモデルや効果的な出店戦略などが大きく貢献していますが、最も影響力が大きいのは、創業者である似鳥昭雄氏の確固たる経営哲学にあるといっても過言ではないでしょう。

その経営哲学の原点は、今から45年前にアメリカで開催された「家具研修セミナー」にまで遡ります。

似鳥昭雄氏は、23歳の時に札幌に1号店を出店した後、27歳の時には北海道に2号店として郊外型の大型店をオープンしましたが、思うように売り上げが伸びずに窮地に陥ってしまいます。そんな矢先、アメリカで「家具研修セミナー」が開催されることを耳にして、参加したいと思うものの、受講には40万円もの費用を工面しなければなりませんでした。2号店の苦戦で資金繰りに窮していた似鳥氏にとって40万円は大金。そこで、親戚からなんとかお金を借りてアメリカへ渡ります。

当時、借金をしてまで多額の資金を投じ、清水の舞台から飛び降りる気持ちで参加したこのセミナーは、似鳥氏の人生の大きな転機となり、ビジネスはターニングポイントを迎えることになるのです。

アメリカに渡った似鳥氏は、販売されている家具の品質が素晴らしいばかりでなく、使う立場に立った機能も充実しており、そのうえ価格は日本の3分の1という現実にカルチャーショックを受けます。そして、この研修を境に、日本人のクオリティ・オブ・ライフの向上や世の中の役に立つことをやりたいという熱い想いが沸々と湧いてきて、「欧米並みの住まいの豊かさを日本のそして世界の人々に提供するというロマン」を抱くようになったのです。

アメリカから帰国後、似鳥氏はこの「ロマン」を達成すべく、ニトリの「60年ビジョン」を明確、かつ具体的に描いていくことになります。まず第1期を1973年から2002年の30年に設定し、「日本一の家具小売業」を目標に全国に100店舗を出店し1,000億円の売り上げを達成することを目指したのです。

この第1期のビジョンは、1年遅れとなりますが、見事2003年には達成しています。

そして、第2期の30年は2003年から2032年になりますが、次のようなビジョンを描いています。

<2012年> 300店舗 売上高3,488億円
「トータルコーディネートのニトリ」へ

 

<2017年> 500店舗 売上高5,500億円
日本の地方の暮しを変革。海外チェーン展開の本格的スタート。

 

<2022年> 1,000店舗 売上高1兆円
国内のドミナントエリア化により日本の暮らしの変革へ

 

<2032年> 3,000店舗 売上高3兆円
世界の多くの人々の豊かな暮らしに貢献。世界A級の「暮らし提案企業へ」

ニトリはこのようにロマン(志)とビジョン(中長期計画)を中心に、意欲、執念、好奇心を加えた「成功の5原則」という似鳥昭雄氏の経験に基づく経営哲学が社員一人ひとりに浸透することによって、組織としてのシナジーを最大限に発揮することが可能となり、ビジョンを確実に達成していくことにつながっているのです。

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