不倫カップルに社会的制裁!ブチ切れ弁護士の奥の手「仮差押」とは?

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読者からの法律のお困りごとにも答えてくれる、人気の無料メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』。最新号で取り上げられているのは、訴訟相手の財産を保全しておくことで、取りっぱぐれを防ぐ「仮差押」にまつわるお話。うーむ、“弁護士も人の子”なんですね。

「仮差押」

例えば、債務者に対して何らかの債権を有している債権者が、債務者から金銭を取り立てる場合、争いになれば裁判によることになる。しかし、裁判では年月がかかり、将来的に勝訴したとしても、その間債務者が財産を隠匿したり、使い果たしていて、強制執行をしても金銭を取れない場合があり得る。

そこで、法は、仮差押という制度を認めている。仮に、債務者の財産を保全しておこうという制度である。ただ、債権者が必ずしも勝訴するとは限らないので、仮差押をする債権者は、債務者に損害を与えないように、担保金を積む必要がある。大体の相場からすれば、訴訟で請求する金額の3割程度を担保とすることになる。だから、私は勝訴がほぼ確実で、依頼者が担保を積むことができる場合以外、仮差押はしないことにしている。

さて、ある不倫事件があり、女性に対して内容証明郵便にて、支払催告をした。もちろん、確実な証拠があってのことである。その女性から、返事の内容証明郵便がきた、不倫の全面否定である。その返事に逐一反論をして、再度内容証明郵便を送付した。それに対して再度の返事が来たのは年の瀬も押し迫った時期で、裁判所はあと2日くらいで正月休みに入るという時期であった。

女性からの返事は、書面ではなく事務所への電話でもたらされたが、依頼者である妻と私に対する罵詈雑言であった。とても普通の女性が口にするとは思えない言葉で罵声を浴びせられた。

私もかなり頭に血が上って、電話を切った後、彼女の給与の仮差押をすることとした。彼女は銀行に勤務しており、そこに出入りしていた夫と不倫関係に陥ったのだが、銀行を退職すれば、勝訴判決を得ても執行できるかどうは分からない。しかも、彼女の態度からすれば、それこそ勝訴判決を得ても、勤務先を退職するなどして、強制執行が功を奏するか疑問であった。

そこで仮差押となったのだが、彼女の態度に対する意趣返しの意味がなかったかと言われると、それもあった。

年末の慌ただしい時期に、仮差押をした。年も明けたころに、彼女から電話があった。すごい剣幕である。給与仮差押の命令は、勤務先である銀行にも送達され、その内容が出入りの男との不倫であることも明らかになってしまった。それを承知の上での仮差押であった。彼女は自分の人生を台無しにしたと言う。妻の人生はどうなるのか?

裁判所からの仮差押命令を受領した銀行から、不倫の男性の会社に厳重注意がいき男性は左遷、女性は閑職へと異動となり、退職勧告もされたそうだ。このことを電話で、私のせいだ、損害賠償請求訴訟をすると、彼女は息巻いた。「どうぞご自由に」が私の返事である。私のせいではなく、自業自得というものである。

裁判は一審で請求額は減じられたものの勝訴、二審で和解となって終結した。最後まで彼女は抵抗していた。裁判中の、それこそ鬼のような形相の彼女の顔は忘れない。

なお、この稿は、既に掲載している「不倫事件パート2」と併せて読んでもらうとよい。

image by:Shutterstock

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