最終赤字289億の日本郵政が、なぜ野村不動産の買収に動いたのか?

 

日本郵政は保有する不動産を有効活用するため不動産開発のノウハウを持つ野村不動産HDを取り込む狙いがあります。日本郵政は不動産事業を行なっているものの、2017年3月期の同事業の売上高はわずか260億円で、全体の売上高13兆円超の1%にも満たない状況です。そのため野村不動産HDの力を借りて事業に弾みをつけたい考えです。ただ、問題は山積です。

2015年5月、日本郵政は海外の物流事業を強化するためにトール社を6,200億円の巨費を投じて買収しました。しかし、業績悪化で4,003億円の減損損失の計上を強いられました。純利益は289億円の赤字です。

日本郵政はトール社の買収時に4,744億円の「のれん」(買収された企業の時価評価純資産と買収価額との差額)を当初計上し、20年かけて償却していく計画でした。2016年3月期末時点でのれんは4,111億円です。のれんや商標権などの年間償却負担額は218億円にもなり、大きな負担を抱えている状況でした。トール社の業績が好調であれば問題なかったのですが、目論見は外れ、わずか2年で巨額の損失の計上を強いられました。

こうした経緯もあり、野村不動産HDの買収では買収価格が焦点となりそうです。投資が割安か割高の判断をするための指標に「NAV(Net Asset Value)」があります。NAVは、税引き後の含み損益(投資不動産物件の簿価と鑑定評価額の差額)に純資産を加えたものです。野村不動産HDは同社の2017年3月期の1株あたりNAVを3,063円と発表しています。

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