バブル崩壊も気づかず。日本人が持つべき歴史の転換点を見抜く眼

 

シャープ、ソニー、東芝など、日本で不動の位置を築いていた一流企業ですら「大規模リストラ」や「外国企業からの買収」などの憂き目をみる昨今、私たちはどのようなことを意識して生きていけば良いのでしょうか? 無料メルマガ『ジャーナリスト嶌信彦「時代を読む」』の著者である嶌信彦さんは、「10年ごとに大きな動乱が起きている」と前置きした上で、そんな時代を生き抜く術を紹介しています。

世界の転換点をいち早く見抜くには? ~時代を読み解く3つの目「虫の目、鳥の目、歴史の目」~

歴史の転換点を見つけることは難しいと思う。特に渦中にあると、これが転換点だと理解することは難しい。だいたい4、5年後、場合によっては10年後にようやく「歴史が変わったのはあの時からだった」と理解できる。しかしながら、早期に感じ取りいち早く対策を実行した企業などが勝者となっている。したがって、転換点を早く見つけることが大事だと思う。

20世紀末尾に9が付く年は大転換期

これまでの経験として、そういった節目はいろいろあった。また、20世紀に入ってから末尾に9のつく年は、大きな転換期だといわれている。

例えば以下の出来事があった

  • 1919年:ベルサイユ条約により第一次大戦後が終結
  • 1929年:第二次大戦のきっかけを作る大恐慌
  • 1939年:第二次大戦勃発
  • 1949年:中華人民共和国成立
  • 1959年:キューバ革命
  • 1969年:アポロ11号の打ち上げ二より、初めて人類が月に立つ
  • 1979年:ソ連のアフガニスタン侵攻により米ソの緊張が高まる
  • 1989年:旧ソ連・東欧圏の崩壊の始まり、天安門事件
  • 1999年:ユーロ誕生

こうやって振り返ってみると10年に1度大きな変動が発生している。89年のソ連崩壊の予兆の中で90年を迎え、ソ連邦は解体、ドイツは統一に向かっていった。

私は89年末に旧ソ連、東欧を2~3週間かけ取材したが、モスクワ駅の裏は闇市のようで、国営マーケットには殆ど品物がなかった。そして、91年にソ連邦が崩壊、東西ドイツが統一するなど大転換が始まった。私は89年末に『1990年・歴史の大転換が始まる─日本と世界、変動の読み方』(PHP研究所)という本を上梓している。

日本経済の繁栄はクタクタ景気

この時期の特徴的な点としては、90年初頭まで日本経済は未曽有の繁栄を遂げていた。しかしながら、これは国民がクタクタになるほど働くことによって支えていたのだ。そして、その後バブルが崩壊した。当時、私は「ちょっとおかしいな」という変化を感じていた。それは、日本の年間の労働時間が2,300時間を超え、アメリカ、イギリスの1,900時間台、フランス、ドイツの1,600時間に比べると異常な高さだったことだ。

日本人は本当によく働き、クタクタになっており、私は当時「クタクタ景気」と名づけたコラムを書いたほどだ。日本人は猛烈に、皆とにかくよく働いていた。

当時の過労死に関する調査によると、残業が月60時間を超す人は残業が月20時間未満の人に比べると、毎日お酒を飲む人あるいは、タバコを30本以上吸う人の割合が1.7倍になるという結果が出ている。また、元日銀総裁の前川氏は「シェア争い、儲け主義を自粛しないと日本は本当にダメになる。労働時間を短縮したユックリズムに徹することが重要だ」と結論づけたレポートを書いていたほどだ。これは「前川レポート」と呼ばれ、そういった転換点を明示していた。

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