これは酷い。国語のプロが追及する、新センター試験「12の不備」

 

さて、今回公表されたのは、あくまでも問題例であり、要するに試作品である。

ブラッシュアップされる前段階の試作品を細かに検討しても意味がないか、と思いもしたが、概要PDFを読み、やはり意味あることだと思い直した。

なにしろ、2016年11月に大学1年生400名を対象とした第1回のモニター調査を行い、その結果を踏まえて記述式問題を「厳選し」、今年2017年2月と3月に大学1年生600名を対象とした第2回のモニター調査を行うという、かなり気合の入ったステップを踏んでいるのだ。

ここまでやっているのだから、それなりのクオリティになっているはずだ。ならば、細かな検討の意味もあろうというものだ。

さて、今回一般に公開された国語のモデル問題例は2つ。

問題例1は、資料2つ(図とガイドライン)及び会話文をもとにして小問を4つ解くもの。想定されている回答所要時間は20分。

問題例2は、資料2つ(駐車場の契約書2種類)をもとにして小問を3つ解くもの。想定されている回答所要時間は30分。

こうしてみると問題例2のほうが厄介なのかと思われそうだが、私自身が解いた実感としては明らかに問題例1のほうが厄介だった。

実際、正解率は次のようになっている(表:概要PDF転載)。これを見ると、問題の不備が多いのは問題例1(表の①)のほうであろうと推測される(4つの小問の正解率がバラバラで差が大きすぎるため)。

大学入学共通テスト(仮称)国語問題例1,2の正解率等

大学入学共通テスト(仮称)国語問題例1,2の正解率等

そこで私は、主に問題例1を中心に検討し、授業でも問題例1のみを扱った。

というわけで、この記事でも問題例1を中心に述べる。

私は以前から全国学力テストの問題がいかにひどいものであるかを詳細に分析・公開してきた(こちらのmine記事参照)。今回も全く期待していなかったが、意外にも良い点が明確に見つかったのは、素直に嬉しかった。

それは、ひとことで言えば、「求めている技能が明確である小問が多い」ということだ。

具体的には次のとおり。

問題例1

小問1 一石二鳥を「言いかえる」設問。同等関係整理力が求められている。

小問2 ガイドラインと提案書を「くらべる」設問。対比関係整理力が求められている。

小問3 父と姉の言い分を「くらべる」設問。対比関係整理力が求められている。

小問4 主張から根拠へ(または根拠から主張へ)と「たどる」設問。因果関係整理力が求められている。

このように、求められている技能が非常に分かりやすい。

作成者の違い(※)がそこに関係しているのかどうかは分からないが、全国学力テストとくらべると、見かけでは気づきづらい本質的な部分でクオリティが上がっているのが分かる。これは、間違いなく歓迎すべきことだ。/(※)全国学力テストの作成者は国立教育政策研究所(文科省)。今回の問題例の作成者は株式会社教育測定研究所及び株式会社ベネッセコーポレーションの両方またはどちらか(概要PDFの末尾に記載)。

特に小問1の「一石二鳥の言いかえ」は、「ふくしま式」最大のヒット作『「本当の国語力」が身につく問題集[小学生版]』のP.33、及び『国語読解[完全攻略]22の鉄則(高校受験[必携]ハンドブック)』のP.80にも全く同じ内容で(一石二鳥の言いかえで)問題が掲載されている(まさかパクったか?!……いやいや、まさかね)。

……と、書いたはいいが、ほめられるのはここまで。

あとは、設問及び採点基準の不備の指摘のみとなる。

とりあえず、骨子を羅列しておこう。いずれも詳しくは後述する。

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