これは酷い。国語のプロが追及する、新センター試験「12の不備」

 

不備12)行政への賛成意見しか書けないことに違和感がある。

これは感想にすぎない。しかし、こういう反感を覚えた人はきっと多かったであろう。

優れた入試問題は、こういうとき「賛成意見で」などと片方で要求することはない。

「賛成か反対かをあなたが決めよ」と言ってくる。

しかしそうなると50万人の採点はできない。

だから、賛成に絞った。

それは、分かる。

でも、それでは記述テストの価値が半減するというものだ。

やはり、辞めるしかない。

既に1万字を超えているのでもうやめたいが、問題例2(駐車場契約書問題)について、一箇所だけ。

新町Pの契約書の第4条。

こんな条文、あり得るのか? 借主の中途解約に触れず、貸主の中途解約についてのみ主張するなんて。こんな異常な契約書、あまり見たことがないのだが。

私はこれまで何度も引越をし、その都度賃貸契約書を目を皿のようにして読んでいるし、自分の塾の契約書も厳密に作成している立場だが。なかなか、お目にかからないタイプだ。

だからこれ、読み慣れている人ほど「借主」と「貸主」を逆に読んでしまい、「え? 何がおかしいの?」と思ってしまわないだろうか。

問3の答えに気づいたときは、ちょっとしたアハ体験であった。

さて、その他、疑問に思った点を書いておこう。

採点基準に明示されていなかったが、こういう場合はどうするのか?

ア)パーツはどれも正しいが、接続がおかしい場合(「AなのにB」と逆接で書くべきところで「AでありB」と並列になっていたり、「CでありD」なら通じるが「CなのでD」になっているため文中にない因果関係が生じていたりするケース)

イ)たとえば40字の中に誤字脱字が1箇所あった場合。

ウ)たとえば40字の中に誤字脱字が10箇所あった場合。

エ)指定された字数より圧倒的に少なかった場合(40字以内で10字とか)。

オ)文末の句点だけ書かれていない場合(文本体は40字ジャストで収まっているが、句点がはみ出るため書かれていないケース)

カ)「~こと」と終えるべき文の末尾が「~から」になっている場合(またはその逆)。

アは、採点者の能力に依存する。50万人ではバイト採点者が多すぎて手に負えない。

イ・ウを同等扱いされてはたまらない。イの答案が誤字脱字以外完全に正しいとして、では許容するのか? じゃあウも許可するのか? 許容する場合、「細かい(こまかい)」と「細い(ほそい)」を混同しているため文意が変わるようなケースではどうするのか?

エは、まあ許容するのだろう。でも、普通の国語指導の現場では暗黙の了解として禁止だ。

オは、まあ禁止なのだろう。でも、普通の国語指導の現場では許容されることのほうが多い気もする。

カは、多くの教師がうなずくだろう。はてさて、どうするのか。

こういったところは、数限りなく生じてくる。

考えうる全てについてあらかじめ基準を作ったとして、それを全バイト採点者が実行できるのか?

実行できたかどうかを、どうチェックするのか?

はてさて。疑問は、尽きない。

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