「睡眠時無呼吸症候群」は、呼吸がどれくらいの時間止まるのか?

2017.05.23
by Mocosuku
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睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。

たびたびニュースなどで取り上げられているため、名前を聞いたことがある方も多いでしょう。

中には家族などから「睡眠中、いびきがすごかったよ」などと指摘され、自分も睡眠時無呼吸症候群なのではないか、と不安に思っている方もいるかもしれません。

そこで今回は、この睡眠時無呼吸症候群がどういう病気なのか、くわしく解説したいと思います。

睡眠時無呼吸症候群の診断:呼吸が止まる時間と回数

日本呼吸器学会によると、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome;SAS)とは、「睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気」のことをいいます。

睡眠時無呼吸症候群の診断をおこなう上で基準になっているのが、「無呼吸低呼吸指数(AHI)」です。

AHIは、1時間あたりの「無呼吸」および「低呼吸」の回数のことを指します。

ここでいう「無呼吸」とは、睡眠中10秒以上呼吸が止まることをいいます。また「低呼吸」とは、無呼吸まではいかなくとも、それに近いほど呼吸が弱い状態のことをいいます。

臨床では、無呼吸や低呼吸の回数が1時間あたりに5回以上確認された場合で、かつ自覚症状がある場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

また、1時間あたりの無呼吸や低呼吸の回数(AHI)が15回以上ある場合には、自覚症状がなくても診断名がつきます。

さらに、AHIは重症度の判定にも用いられます。AHIが5~15回未満では軽症、15~30回未満では中等症、30回以上では重症と判断されます。

では、睡眠時無呼吸症候群の症状にはどんなものがあるか、みていきましょう。

こんな症状がある場合は睡眠時無呼吸症候群かも

 睡眠時無呼吸症候群には、気道がふさがったり、狭くなることで起こる「閉塞タイプ」と、脳幹にある呼吸中枢の異常によって起こる「中枢タイプ」、そしてこれら両方を満たす「混合タイプ」があります。

このうち、もっとも多いのは「閉塞タイプ」です。

そこで、ここでは閉塞タイプの代表的な症状について紹介していきます(下記、カッコ内は症状の発生頻度)。

・強烈ないびきがある(93%)

・家族などから「無呼吸」を指摘される(92%)

・日中に強い眠気を感じる(83%)

・寝返りなどが多く、寝相が悪い(54%)

・熟睡感がない(51%)

・倦怠感がある(51%)

・夜中にトイレに行きたくなる回数が多い(40%)

・夜中に呼吸がしにくくなる感じや窒息感がある(38%)

・起床時に頭痛がある(35%)

・夜中に目が覚める(35%)

・集中力が低下する(28%)

・不眠(19%)

※出典:「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2012 年更新版)

先ほどお話ししたように、実際にはこれらの自覚症状と、専用装置でのAHIの測定結果をもとに診断をします。

睡眠時無呼吸症候群は生命にもかかわる病気

閉塞タイプの睡眠時無呼吸症候群の原因はいくつかありますが、そのひとつに「肥満」があります。

その理由は、肥満によって首のまわりに脂肪がついていると、気道をふさいで呼吸ができなくなり、無呼吸状態を招くからです。

また、睡眠時無呼吸症候群によって熟睡できなくなると、睡眠時に分泌される成長ホルモンが足りなくなり、脂肪を分解しにくくなります。

さらに、呼吸がうまくできずに低酸素状態に陥るため、本来、睡眠時には活動がおだやかになる交感神経(活動時に働く交感神経)が活発化し、血圧の上昇や心拍数の増加が起こり、心肺機能や脳に負担がかかります。

このような状態が続くと、心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの生命にかかわる合併症を発症するといわれています。

また、ときに自分とは関係ない人まで死に至らしめることもあります。

過去にアメリカで行われた調査によると、睡眠時無呼吸症候群の患者は、健常者に比べて交通事故の発生率がおよそ7倍も高いこと、さらに重症度が高いほど、その確率は高くなることが明らかにされました。

また、今回は呼吸器の障害という立場から説明しましたが、睡眠時無呼吸症候群は睡眠障害のひとつでもあり、『睡眠障害国際分類第2版診断とコードの手引き』にも記載されています。

睡眠時無呼吸症候群は決して見過ごすことができない病気です。

後悔しないためにも、思い当たる症状がある人は、ぜひ受診してください。
 
【参考】

・「循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(2012 年更新版)

・「Ⅲ睡眠時無呼吸症候群

・松沢呼吸器クリニック「交通事故とSAS

・『睡眠障害国際分類第2版診断とコードの手引き』、医学書院、 2010年

 

執筆:伊坂 八重(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ

 

<執筆者プロフィール>
伊坂 八重(いさか・やえ)
メンタルヘルスライター。株式会社 とらうべ 社員。精神障害者の相談援助を行うための国家資格・精神保健福祉士取得。社会調査士の資格も保有しており、統計調査に関する記事も執筆

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供

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記事提供:Mocosuku(もこすく)

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