なぜ無名な町の名を冠した居酒屋が「ミシュラン」に載れたのか?

 

2000万円まで独立支援~故郷を潤す草の根的経営

ファンファンクションは社員の独立を積極的に支援している。

日本橋にオープンした「長崎県五島列島小値賀町(おぢかちょう)」。小値賀町は17の島々からなる町で、そこで採れる魚がこの店のウリだ。中でも人気のメニューが、小値賀町自慢の魚介を贅沢に使った「海鮮ウニ黄金しゃぶしゃぶ」(1人前2138円~)。刺し身でウニを巻き、ウニをふんだんに使ったスープでしゃぶしゃぶする。

「小値賀だと180種類の魚が採れるので、いろいろな種類が来ます」と、オーナーの漆畑義章は言う。

2年前にオープンしたこの店は漆畑にとっては2軒目のオーナー店になる。1軒目は2012年、神田にオープンした「青森県むつ下北半島」。自分の故郷、青森のうまいものを知ってもらいたいと作ったのだ。

オープンに際して、「とうていお店を出す資金はなかったです。合掌社長の方から独立支援ということで設備資金を出していただいた」(漆畑)という。

ファンファンクションでは、勤続3年以上で優れた業績を上げた社員に独立の支援を行っている。開業に必要な資金は最大2000万円まで会社が融資社員はそれを5年で返済するシステムだ。

この制度でこれまでに4人が独立、5つの店を運営している。

新たに独立のチャンスをつかんだのが、山梨県出身の吉田光二。「佐賀県三瀬村ふもと赤鶏」八重洲店の統括店長だ。

山梨県北杜市に地元で人気の農場がある。その中村農場直売所に、吉田が合掌を連れてやってきた。名物は「親子丼 地鶏スープ付」(1185円)。これを合掌に食べさせるために来たのだ。この鳥をメインに、地元山梨の食材を使った店を開きたいと、吉田は考えている。

この農場の一押しが独自に作った「甲斐路軍鶏」だ。代表の中村努さんを合掌に引き合わせる吉田。ここは生産から加工・販売まで一手に行っているため、衛生管理も行き届いているうえ、他ではなかなか扱っていない希少な部位も手に入る。

「これだけこだわっている鶏だったら、作れるね、これメインで」(合掌)

吉田にはもう一つ、合掌に見せたいものがあった。それが南アルプス農園。育てているのはトマトだ。美味しさの秘密は水耕栽培。ミネラル豊富な南アルプスの地下水を使っている。

合掌のOKが出れば独立する吉田。地元をPRする重責を担っていく。

「すごい収穫になりました。さらに頑張っていかなければという使命感みたいなものが湧いてきました」(吉田)

地産他消から地産地消へ~採れたて野菜の惣菜屋

茨城県つくば市にある人気の野菜直売所、「みずほの村市場」。ここの自慢は「朝採れ野菜」。地元の農家が毎朝持ち込んでくるから鮮度バツグン。近県からも客が買いに来るほどの人気ぶりだ。

その一角で合掌は2016年10月、新たな店を始めた。それがお総菜の店。サラダやピクルス、ゴボウのキンピラなど、みずほの村市場の極上野菜をふんだんに使ったお惣菜がおよそ10種類。大量の試食を用意して客にアピールする。

なぜ東京ではなく、地方で総菜店を始めたのか。

「いままで我々がやってきたのは、地域の食材を東京でブランディングすること。いわば、地産他消。ここは地産地消なんです。地元の野菜をさらに美味しくして地元で消費し地元だけでなく他からも人を呼ぶ戦略なんです」(合掌)

合掌は、こうした総菜店を全国各地の道の駅や直売所に開きたいと、考えている。地方を元気にしていくファンファンクションの新たな試みだ。

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