会社である程度の地位にいる方なら出来れば一生耳にしたくない言葉、それが「降格」。では、会社が社員を降格する場合の基準はどのように決められているのでしょうか? 無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者で現役社労士の飯田弘和さんは、職務遂行能力(職能)が低下したという理由で会社が一方的に「降格」を行うことは許されないと説明しています。いったい、どういう事なのでしょうか?
御社の就業規則には、降格の定めがありますか?
一般的に「降格」には、2つの種類があります。
1 職能資格制度における資格や等級の引き下げ
2 人事権の行使として行われる地位(役職)の引き下げ
1.について、もう少し詳しくお話します。職能資格制度を採用している会社で、職能資格や等級を見直し、能力以上に格付けされている者の資格や等級を引き下げる場合が当てはまります(降格に合わせて、給料も下がるのが一般的です)。
一般的に、労働者の職務遂行能力(職能)は、長く働き続ければ向上していき、一度身に付いた能力は低下することがないと考えられています。ですから、この場合の「降格」は通常、想定されていません。
なので、1.のような職能資格制度における「降格」は、会社が一方的に行うことは許されません。「労働者との合意」があるか、または「就業規則の明確な根拠と相当の理由」が必要となります。
もし今、御社の就業規則に「職能資格制度における降格」の定めがない場合、ただちに定めを設けるべきです。ただし、これは「就業規則の不利益変更」となりますので、「不利益ではあるが、それでも尚、合理的であると認められる」ものでなければなりません。けっこうハードル、高いっスョ! 専門家へ相談されることをオススメします。
では、2.の人事権の行使として行われる「降格」についてお話します。役職の昇格や降格は、会社の権限として当然に予定されていて、その権限の行使について、会社に広く裁量権があります。会社は、従業員をどのような役職に付けるか自由に行うことができます。当然、管理職としての能力や評価が低ければ、降格も行えます。これらは、人事権の行使として認められています。ただし、「濫用」はいけません!
では、どのような場合に「濫用」となるのか? これについては、裁判所が「使用者側の人事権行使についての業務上・組織上の必要性の有無・程度、労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を有するか否か、労働者がそれにより被る不利益の性質・程度等の諸点を総合して判断すべき」と述べています。
要は、程度問題ということなのですが、この場合、かなり広い裁量権が認められているので、余程ヒドイことをしない限り、人事権行使による降格は認められるでしょう。
以上を踏まえて、あらためてお聞きします。
「御社の就業規則には、降格の定めがありますか?」
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