【加計学園】前川氏の「醜聞リーク」でわかった共謀罪の危険度

 

安倍首相は最も信頼を寄せる側近、今井尚哉首席秘書官に実現への絵を描かせた。だが、酪農家の減少が著しいこの国になぜ獣医学部が新たに必要なのか。なぜ既存の大学では不十分なのか。それを説明できる材料はない。あるのは、獣医学部を特例でつくりたい加計学園と遊休地を活用したい今治市のニーズだけだ。

その難題を受けとめて、なにがしかの理屈をひねり出し、安倍首相を議長とする国家戦略特区諮問会議の忖度に満ちた審議を通過させたうえで、文科省などを抑え込まねばならない。

今井氏は加計学園、今治市と連絡を取り合い、獣医学部新設計画にどのような衣装を纏わせるか、入念な打ち合わせをしたことだろう。

今治市と愛媛県は2015年6月4日、「国際水準の獣医学教育特区」計画を内閣府に提案した。

その添付資料には、既存の獣医学部との違いとして、動物由来感染症の防疫、創薬などライフサイエンス分野における連携研究に対応する、と記述されている。

だが、これらは本当に、既存の獣医学部で対応できない分野だろうか。そんなことはあるまい。

提案書の指摘するように、これまでの獣医学教育が本当にペットの医療や家畜の衛生管理ばかりで、時代に十分対応できていないのだとしたら、教育研究対象を新しい分野にまで広げればいいだけのことだ。

なにより今治市と加計学園の計画の問題点は具体性がないことだ。獣医学部を新設するためにこれまでとの違いを「作文」したにすぎない。

この計画に対し安倍首相から「抵抗勢力」と見なされた日本獣医師会が新設反対を特区担当の石破茂大臣(当時)に強く訴えた。

いくら安倍首相肝入りの案件とはいえ、石破大臣のころは、官邸の側近たちもゴリ押しはできない。一定のハードルを設けないわけにはいかず、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改定2015」で、「新設のための4条件」(下記)が示された。

現在の提案主体による既存獣医師養成でない構想が具体化し▽ ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要が明らかになり、かつ、▽ 既存の大学・学部では対応困難な場合には、▽ 近年の獣医師需要動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

一見してわかるとおり、「構想が具体化」「獣医師が新たに対応すべき具体的需要」と、具体性を要求した内容だ。

この具体性がいまだ出てこないまま、加計学園の獣医学部計画が既定路線として進められ、設置認可の審査も、結論ありきの状況で行われているのである。

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