思い出したい。日本人が忘れかけている「いただきます」の誇り

 

「瑞穂の国」

嬉しいことに、こうした農業の真の姿を知る機会は着実に広がりつつある。

東京からも近い棚田、大山千枚田(千葉県鴨川市)には景観を楽しんだり、生物観察をしたりするために年間3万人が訪れる。都市住民に田んぼの一部を貸し出す「オーナー制度」も、募集する136区画は常に定員いっぱい。…

 

和歌山県田辺市。大都会からの交通アクセスは決して良くない。だが、人口約3,300人の上秋津地区は全国的に名高いミカンと梅を柱に農業体験や飲食施設、直売所などを整備し、年間6万人を集める名所となった。

 

「ムスッとしていた子どもが笑顔で帰っていく」。長崎県松浦市で修学旅行生を受け入れる兼業農家、末吉久美(60)は話す。

 

周辺には名所があるわけでもないのに、毎年春と秋、全国からの修学旅行生でにぎわう。町おこしの一環で同市が03年度から始めた体験学習に来るのだ。今や3市2町に広がり、受け入れる農家や漁師の家は500軒ほど。
(日経新聞、H17.03.24)

欧米では市街地と農地はくっきりと別れているが、我が国では都市の中にも農地が散在するしたりする。「スプロール現象」などと悪口を言わる事もあるが、逆に言えば、都会っ子が農業体験をしたり、都市住民が週末農業をするには、最適な環境である。こういう身近な所で、農業体験ができれば、農業の真の姿を理解できる国民が増えていくだろう。

古代の我が国は「瑞穂の国」とか「秋津島」と自称した。「瑞穂」とは瑞々しい稲穂という意味であり、秋津とはその上を飛ぶトンボである。

天皇陛下も御自ら皇居内の田で、田植えや刈り入れをされ、その稲は伊勢神宮の神嘗祭、宮中での新嘗祭にお供えされて、神々の恵みに感謝を捧げられる。これが実は我が国の原初の光景であった。

自然の恵みに気づき、感謝する所から、農に対する敬愛が生まれ、それが農民の誇りにつながる。ここから我が国の農業の再生が始まるだろう。

文責:伊勢雅臣

image by: Shutterstock.com

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