権力の私物化か。腹心のジャーナリストを無罪放免にした官邸の闇

 

それから約2週間後の4月18日、詩織さんは山口氏にメールを出した。「お会いしたのは新規のプロデューサーとして採用、ないしフリーとして契約をしたいので…とお誘いいただいたからですよね。なのに意識のない私をホテルに連れ込み、避妊もせずに行為に及んだあげく、その後なにもなかったかのように…」。

それに対する山口氏の返信は、詩織さんの主張を否定する内容だった。下記はその一部。

意識不明のあなたに私が勝手に行為に及んだというのは全く事実と違います。
私もそこそこ酔っていたところへ、あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった。お互いに反省するところはあると思うけれども、一方的に非難されるのは全く納得できません。

確かに、詩織さんはその間のことを記憶しておらず、ベッドに詩織さんが入ってきたのか、詩織さんが寝ているところに山口氏が襲いかかったのかは、明瞭ではない。

しかし、恋人でもない女性を、就職の世話をすると誘い出して酔わせ、予約していたホテルのツインルームに連れ込んだという客観的事実は動かしようがない。しかも、性行為をしたことについては、山口氏は「そういうことになってしまったと肯定しているのである。

泥酔している女性を保護するのなら、家まで送り届けるなり、別に部屋をとるなり、他の方法があるはずだ。これはどうみても犯罪ではないか。だからこそ高輪署が捜査し、準強姦罪の逮捕状まで取ったのだ。

詩織さんの怒りは、逮捕状を執行しなかった警察にも向けられた。

「6月8日、複数の捜査員が逮捕状を手に成田空港で、帰国する山口氏を逮捕するために待ち受けていたそうです。今でも、捜査員の方が私に電話を下さったときのことを鮮明に覚えています。それは、『今、目の前を通過していきましたが上からの指示があり、対応することができませんでした、私も捜査を離れます』と言う内容のものでした」

「上からの指示」を出し、異例にも捜査担当を高輪署から警視庁捜査一課に移したのが、当時の警視庁刑事部長、中村格氏である。第二次安倍政権発足時に菅官房長官の秘書官をつとめ、現在は警察庁組織犯罪対策部長だ。共謀罪法案の可決を待ち望んでいる一人であろう。

官邸に他の記者より深く食い込んでいることを自慢する山口氏は、TBSを退社後の昨夏、参院選直前に総理というタイトルの安倍ヨイショ本を出版した。検察が不起訴処分にしたのは、その直後のことだ。

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