小沢辞任の何がまずかったのか
小沢氏が辞めた直後の本誌で、私はこう書いた(No.491)。
マスコミに煽られて、政権交代のための革命的な権力闘争に命懸けで身を投ずる覚悟もない民主党のピーチク議員が「小沢では戦えない」などと、自分がマスコミの虚妄の論調と戦って有権者を説得し抜くだけの力量がないのを棚に上げて全部を小沢のせいにすり替えてパーチク言って、そういうマスコミと議員の連動性の知的レベルにウンザリして小沢は辞めたのだろうが、それはやっぱりプッツンであって、本当は小沢はそのピーチクパーチク連中を全員集めて徹夜でも何でも討論集会を開いて、彼らを革命的戦士に鍛え上げるべきだった。そういうことを「面倒くさい」と思ってしまうところが小沢の最大欠陥であって、鳩山はそこに関しては小沢を見倣うべきでない。
と。小沢氏がやるべきだったのはむしろ逆のことで、これが旧体制による反革命の陰謀であること、これを正面から乗り切ってこそ「明治以来100年間の官僚支配を打破する革命的改革」の扉が開くのであることを全党に徹底し、全国に散って有権者にそのことを明らかにして「この革命的改革を一緒に戦おう」と訴えるよう号令をかけることだったと思う。
党員の多くも有権者のほとんども、何とはなしの雰囲気で政権交代が起きるかのような安易極まりない気分で総選挙に向かった。それが革命的であればあるほど、血が流れるのだという覚悟は、ほとんど誰も持ち合わせていなかった。だから民主党政権は、同じ自民党と検察・官僚体制とマスコミのスクラムによる同じ「印象操作」の手法に翻弄され続けて3年余りで潰れ、そのことの総括がついていないから今なお立ち直れないのである。
反対に、自民党側は小沢潰しという情報テロ「第1弾」の成功で味をしめ、さっそく翌6月には「第2弾」として今度は大阪地検が石井一副代表をターゲットに「障害者郵便割引制度の悪用を口利きした」という凜の会事件をデッチ上げ、また「第3弾」として小沢氏に代わって代表に就いた鳩山由起夫氏の政治資金疑惑のリークも始まった。それもこれも、小沢氏のところが堤防決壊したので自民党側がかさに掛かって情報テロを仕掛けてきたのであり、さらに政権交代が実現してからも、同じやり方で民主党政権を攻撃し続けて、「印象操作」による国民幻惑のノウハウを磨き上げたのである。
そういう訳で、ポストが言うように、今日の安倍首相のやりたい放題を招いた唯一ではないが最大の責任は09年の小沢氏にあるというのは本当である。しかし今や「わずか6人の少数政党の党首」(同誌)となった彼にこの状況をめくり返すだけの力は残っているのだろうか。ポストのインタビュー記事は「以下次号」となっているので、さらなる小沢節に期待したい。
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