富士フイルムHD、375億円の損失。名門の不正会計はなぜ起きたか?
2015年7月の内部監査では、7割程度の契約が月ごとに設定されていた目標コピー枚数量に達していなかったといいます。
この仕組みであれば、「使わなければ料金はかかりません」と言って販売する営業担当者もいたでしょう。簡単な営業トークで売上を上げることができます。売上に応じてボーナスなどが支給される評価制度だったため、無理やり販売していた営業担当者もいたようです。業績を調整する目的で、契約未締結、機器未設置での先行売上の計上、架空売上の計上、費用の繰り延べ処理といった不適切な会計処理も行われていました。
さらに、ニュージーランドの子会社では、教育機関などに物品を無償提供する販促活動の費用に相当する金額を顧客に対する売上に計上していたといいます。また、競合他社の顧客に対しリース債務の残額や解約金を肩代わりし、新規のリース契約を獲得する活動も行なっていました。
こうした不適切な会計処理が行われていた背景には「売上至上主義」が蔓延していたことがあります。目標達成によるボーナスが報酬のなかで大きな割合を占め、そのうちの売上の考慮割合が大きかったことが売上至上主義につながったと考えられています。
ちなみに、ニュージーランドとオーストラリア子会社の2016年度の業績評価のウェイトは、総売上高が3割、営業利益が3割、アウトソース・ソリューションビジネスの売上高が2割となっていて、評価項目における売上高と利益の比重が高くなっています。売上高と利益偏重の業績評価が売上至上主義につながったと考えられます。
売上至上主義を示す事例があります。日本国内の業績が伸び悩むなか、ニュージーランドやオーストラリアなどのアジア・オセアニア地域が業績回復の牽引役として期待されていました。そうしたなか、ニュージーランドの子会社はある期間において48カ月連続で業績目標を達成したといいます。ある人物はその期間の中で2度、最優秀MDとして表彰され、各2万NZドルの報奨金を獲得しています。ただし、これは不適切な会計処理が行われていた中での結果にすぎません。
2015年7月8日(米国時間7月7日)、ニュージーランド子会社で不正会計や売上過大計上が行われているとの告発がありました。不正を許せない良心があったようです。しかし、告発に対し幹部が「まずは問題ないと書け」などと不正会計の隠蔽指示を行なったといいます。そして「不正会計、売上過大計上はなかった」と結論づけました。もちろんこのようなことで隠し続けることはできず、明るみになり、そして第三者委員会による調査が行われるに至ったのです。
稼ぎ頭にアタマ上がらず、暴走を止められなかった親会社
ビジネス・成功企業の生現場佐藤昌司店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業話題
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