富士フイルムHD、375億円の損失。名門の不正会計はなぜ起きたか?

 

不適切な会計処理は、富士フイルムHDの管理・監査体制の甘さが招いたといえます。報告ラインが特定の人物に集中していたため、取締役による監督が有効に機能しませんでした。監査や経理のチェック機能も有効に働いていませんでした。また、ニュージーランドでは販売会社とリース会社が同一の住所で共存し、その代表者が同一人物だったため、審査・チェック機能が働かなかったことも不正を助長しました。

富士フイルムHDと傘下の富士ゼロックスの一体感の欠如も指摘されています。そのことが不正を正せなかった原因とも指摘できます。そのことを示すため、富士フイルムHDの事業構造を確認します。

同社の事業は次の3つで構成されています。「イメージング ソリューション」「インフォメーション ソリューション」「ドキュメント ソリューション」の3つです。

イメージングソリューション事業はカメラの販売やプリントサービスなどを行います。インフォメーションソリューション事業は医療機器や医薬品などを販売します。ドキュメントソリューション事業はオフィス用複写機・複合機、プリンターなどを販売します。

2001年3月に富士写真フイルム(現・富士フイルムHD)富士ゼロックスの株式を追加取得し連結子会社化しました。富士ゼロックスはドキュメントソリューション事業の中核を担う企業で、同事業に関する国内外の製造子会社や販売子会社を多数所有しています。

富士ゼロックスが中核のドキュメントソリューション事業は富士フイルムHDの売上高の4割以上を占める稼ぎ頭です。そのため、富士フイルムHDは親会社とはいえ、傘下の富士ゼロックスに頭が上がらなかったのかもしれません。

そういったことから、富士ゼロックスの海外子会社の暴走を富士フイルムHDが管理しきれなかった面がありそうです。例えば、富士フイルムHDは企業理念で「オープン、フェア、クリアな企業風土」を目指すとしていますが、富士ゼロックスのホームページにはどこにもそのような言葉は見当たりません。両者には一体感が見られないのです。

不正発覚を受けて、富士フイルムHDは経営陣を刷新すると発表しました。そして再発防止策を講じることも示しています。はたして同社は失った信頼を取り戻すことができるのでしょうか。

image by: TK Kurikawa / Shutterstock.com

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

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【著者】 佐藤昌司 【発行周期】 ほぼ日刊

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