韓国は「慰安婦合意」をどんな理屈で破棄するつもりなのか?

 

秋氏は「両国は正すべきことは正した上で信頼に基づいた未来志向の関係に改善していかなければならない時期だと思う」などと述べていますが、正すべきは韓国側だけです。両国が取り決めたことを誠実に履行している日本が、何を正さなくてはならないのか、意味不明です。

そもそも1965年の日韓基本条約および請求権協定においてすべて解決済みであったはずでしたが、条約や協定の解釈や実施をめぐる「紛争」は外交的に解決するよう定められていたため、日本としても、慰安婦問題に対処せざるを得なかったわけです。だから日韓慰安婦合意に「永遠かつ不可逆的に解決」という文言を入れたのです。またいつ韓国が事実をでっち上げて、新たな謝罪と賠償を求めてくるかわからないからです。

ところが文在寅政権はさらに、日韓慰安婦合意では「被害者個人の請求権に影響を与えない」という立場を裁判所に伝えていたといいます。要するに韓国政府は日韓合意後も慰安婦の個人請求権があると主張しているのです。

「個人請求権は存在」=慰安婦合意で韓国政府

つまり文在寅政権は「最終的かつ不可逆の解決を完全否定しようと躍起になっているわけですが、どのような屁理屈をつけても、すでに両国が合意している以上、小細工をしても無理です。これ以上の屁理屈は、いくらお人好しの日本であっても、嫌韓感情をさらに悪化させるだけの効果しかなく、また、日本のみならず、アメリカも絶対に飲めない話でしょう。

しかし、文在寅政権がこのような主張を改めて行ったということは、慰安婦問題のみならず、これから韓国はさまざまな歴史問題を新たにふっかけてくる可能性があります。「日帝36年の七奪」から「強制労働」など、次から次へと反日のお題目を持ち出してくることは、まず間違いないと思います。

文在寅大統領の誕生時、選挙期間中に主張していた日韓合意やTHAAD配備の見直しについて、「大統領選挙でそうは言っていても、大統領になれば現実路線に進む」といった希望的観測もありましたが、やはりそれは間違っていたようです。

THAADについては、「発射台6基のうち2基の搬入が公表されただけで、残りの4基が搬入されたことを国防部が大統領府に報告していなかった」などという理由で、文在寅政権は追加の4基の配備を一時停止し、環境への影響評価を実施すると発表しています。そしてこの環境影響評価が出るには1年程度かかるといわれています。

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しかし6基からなるTHAAD1砲台が搬入されていることは韓国メディア報道でも知られており、「未報告」というのはほとんどイチャモンに近いものがあります。結局、アメリカと中国の顔色を伺いながら、最初の2基だけ配備したという実績を作りつつ、残りは一時停止するという、中途半端な決定をしたということなのでしょう。

しかしアメリカ側はそんなに甘くはありません。大統領府で文大統領と先日会談した米民主党のディック・ダービン上院議員は、「『韓国がTHAADを望まないなら、予算9億2,300万ドル(約1,010億円)を別の所に使うことができる』と文大統領に言った」と暴露したそうです。つまり、「韓国がありがたいと思ってもいないのに、なぜ9億2,300万ドルにも達する米国人の税金を使わなければならないのか」という強い疑念と不満の表明が、アメリカの野党議員からも出ているわけです。

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