SCO拡大の意義
次にSCO拡大の意義について考えてみましょう。
SCOは、しばしば中ロの首脳が言及しているように、「アメリカの一極支配に対抗し、多極世界を構築するために」つくられました。中国とロシアだけでも強力ですが、ここにインドが加わることでさらに強力になります。インドは現在、GDP世界7位。しかし、10年以内に日本を抜いて、世界3位になるでしょう。
確かに、インドと中国の仲は、良好とはいえません。それでも、インドは、中ロが主導するSCOに入った。これは、インドが「多極世界をつくり、インドもその一極になりたい」ということなのでしょう。そして、インドは、間違いなく「大きな極」になるでしょう。
現在の世界を見ると、アメリカの影響力は、新世紀に入ってから衰え続けています。ブッシュは、愚かなイラク戦争で、アメリカの権威を失墜させた(ルトワックさんは、イラク戦争を、「真珠湾攻撃並の失敗」と語っています)。
平和を叫んで登場したオバマ。彼は、リビア、シリア、ウクライナに介入し、アメリカの国力を低下させた。結果、2015年3月の「AIIB事件」では、日本以外のすべての親米国家から裏切られることになりました。「アメリカ・ファースト」を叫んで登場したトランプ。彼は、「パリ協定」を離脱し、孤立の道をまっしぐらに進んでいます。
その一方で、中国は、「グローバリズム絶対支持!」「パリ協定絶対支持!」を宣言し、グローバリスト、国際金融資本と和解している。日本のメディアは、「一帯一路」「AIIB」「上海協力機構」など中国が主導するプロジェクトについて、「ハチャメチャさ」「いいかげんさ」などを取り上げる傾向があります。そして、国民も、「中国はやはりハチャメチャだ!」という報道を喜ぶ。
中国はハチャメチャで、いいかげんなのはその通り。それでもSCOは、16年続いています。そんなにハチャメチャな組織であれば、なぜインドは「入りたい!」と思ったのでしょうか? 私たちは、そういうことも考える必要があります。
SCOの例は、「中国の他の巨大プロジェクトも、いずれ軌道にのる可能性がある」ことを示しています(もちろん、その前に中国経済がボロボロになり挫折する可能性もあります)。
私は、好き嫌いの話をしているのではありません。「中国を侮りすぎない方がいい」と言っているのです。
日本は80年前、トップも国民も世界情勢がまったくわかっていませんでした。それで、1937年に日中戦争が始まったとき、日本は、アメリカ、イギリス、ソ連、中国4大国を敵にした。
今回は、同じ過ちを繰り返さないよう、いつも注意が必要。過ちを犯さないための第1歩は、「世界で起こっていることを、日本にとっていいことも悪いことも正確に知っておくこと」です。
何が起こっているかわからずに、どうやって対応策を考えることができるでしょう?