怪文書はホンモノだった。強行採決後の出来すぎたタイミングで発表

 

前川氏が「私が受けたレク資料だ」と証言した文科省内部文書は、加計学園の岡山理科大学獣医学部を新設するため安倍官邸や内閣府がどう動いたのか、その一端を知りうる重要な内容を含んでいる。

明るみに出た8つの文書のうち、これまで「官邸の最高レベルが言っていること」「これは総理のご意向だと聞いている」という記述が、安倍首相の関与をうかがわせるものとしてクローズアップされてきたが、筆者が注目するのは、昨年10月7日の日付が記された「萩生田副長官ご発言概要」という以下の文書だ。

再興戦略改訂2015の要件は承知している。問題は、「既存の大学・学部では対応が困難な場合」という要件について、例えば伝染病研究を構想にした場合、既存の大学が「うちの大学でもできますよ」と言われると困難になる。

四国には獣医学部がないので、その点では必要性に説明がつくのか。

加計学園が誰も文句が言えないような良い提案をできるかどうかだな。構想をブラッシュアップしないといけない。

福岡6区補選(10月23日)が終わってからではないか。

獣医師会や農水関係議員との関係でも、農水省の協力が必要。

私の方で整理しよう。

萩生田副長官はいうまでもなく、今井尚哉首席秘書官と並ぶ、安倍首相の側近中の側近だ。加計学園系列の千葉科学大名誉客員教授でもある。

この時点で、萩生田氏は超えるべきハードルを認識していたということだろう。2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略改定2015」における、獣医学部「新設のための4条件」をクリアできないのではないかという文科省の懸念にも理解を示していたことがうかがえる。

しかし、結果的には4条件についての突っ込んだ議論のないまま、今年1月、事実上、加計学園の大学獣医学部新設が決定し、同学園は今治市でキャンパス建設を始めたのである。

4条件を端的にまとめれば「獣医学部の新設は、新薬の開発や、水際の感染症対策など新しい分野の具体的な人材需要が明らかになり、既存の大学獣医学部では対応できない場合にかぎる」ということだ。

前川氏が「検証されていない」と語っているように、この基本条件は官邸内閣府に無視された。むしろ、加計学園の計画を実現するためのいわばゴマカシ手法に力点が置かれた。

文科省官僚がレク資料として記録に残した萩生田氏の発言からは、そのためのポイントが浮かび上がる。

「私の方で整理しよう」というのは、利害調整などはこちらでやるという意味だろう。「総理のご意向」にとって障害となる組織や人は、彼らにとっての抵抗勢力だ。獣医学部をつくりたがっている他大学、計画に反対する獣医師会、農水省とその族議員、さらには獣医師会とつながりの深い麻生副総理…。

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