怪文書はホンモノだった。強行採決後の出来すぎたタイミングで発表

 

福岡6区補選が終わってから」と萩生田氏が言ったのは、鳩山邦夫氏の急逝にともなう同補選で、麻生氏が日本獣医師会会長である蔵内勇夫氏の長男、蔵内謙候補を推し、菅官房長官が鳩山二郎候補を応援するという「代理戦争」の様相を呈していたからだ。選挙戦のさなかに、調整は難しい。

また、「構想のブラッシュアップ」といっても、教授陣も決まってない段階で、実質をともなうはずもなく、いわば「作文」を上手に、という程度のものであろう。

四国での必要性に説明がつくか」という問題については、おそろしく強引な決着が図られた。

昨年11月9日の国家戦略特区諮問会議で「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」とされ、初めて設置場所がこの条件に合う四国地方に限定されることとなった。

ところで、政府が文科省内部文書についての再調査に追い込まれた背景には、二人の女性によるこの問題への強烈な追及があった。

一人は東京新聞の望月衣塑子記者だ。社会部員だったと思うが、「永田クラブ」に籍を置いているのであろうか、6月6日、8日の菅官房長官定例会見で、日和見空気にどっぷりつかっている他社の政治部記者をしり目に、一人気を吐いた。

望月記者「公文書管理についての告発が相次いでいます。前川さんだけでなく複数の方の告発が出ています。もう一度真摯にお考えになって文書の公開、あるいは第三者による調査をお考えになりませんか」

菅官房長官「わが国は法治国家ですから法律に基づいて適切に対応している」

望月記者「匿名で出所がハッキリしない文書は調べないということですが、公益通報者保護法のガイドラインに匿名の通報についても可能な限り同様な取り扱いを行うとなっています。法治国家であればこのガイドラインに沿って文書があるかないかを真摯に政府の方で調べるべきではないですか」

望月記者は司会者の「同じ質問を繰り返さないで」「質問は簡潔に」という声にもひるまず続けた。官房長官の記者会見では異例なことだ。

窮すると菅官房長官は同じ答えを繰り返す。「様々な指摘を踏まえて文部科学省で検討した結果、出所や入手経路が明らかでないものについては存否や内容の確認は必要ないと判断したと承知している」

望月記者の気迫に引っ張られたのか、ジャパンタイムズの男性記者が加勢した。「文科省の現役職員が文書の存在を認めたという各社の報道は嘘だとおっしゃるんでしょうか

菅官房長官は「嘘だとは言っていません」と言い、またしても同じ発言を繰り返した。「入手経路が明らかにされていない文書についてはその存否や…」

男性記者「なぜそう考えるかと言う理由の説明がない。要するに、やりたくないとしか聞こえないんです」

望月記者が官房長官に食い下がった6月8日、参院農水委員会では森ゆう子議員が萩生田官房副長官や内閣府の官僚に質問を浴びせていた。

森議員は今治市に情報開示請求して手に入れたおびただしい数の行政文書を持参していた。

記録によると、2015年4月1日、今治市の特区担当者は政府からの連絡を受け、その翌日、急きょ総理官邸に向かった。

森議員「萩生田副長官、そのさい今治市の担当者は官邸で誰に会ったのですか」

萩生田副長官「確認できませんでした。公文書管理法により、すめば遅滞なく廃棄することになっており、確認は困難です」

森議員「山中元文科事務次官と下村元文科大臣、今治市の担当者が総理に会ったのでは」

萩生田副長官「そのような事実はない。面会記録に今治市関係者はない」

これまでの国会審議や報道により、加計学園の獣医学部を岩盤規制突破の名のもとに作らせるという官邸の意思を受けて、担当窓口である内閣府が今治市と連絡をとりながら実現へ向けて準備を進めてきたことがわかっている。

2015年4月2日といえば、今治市が国家戦略特区による獣医学部新設を提案する2か月前のこと。この段階で、今治市の担当者が官邸に招き入れられたとすれば、加計しか眼中にない不公正な行政を裏付ける。

それゆえか、官邸も内閣府も知らぬ、存ぜぬ、確認できぬ、の一点張りである。今治市が、多数の資料を情報公開しているのに、政府は隠ぺいしたまま口をつぐんでいる

森議員の怒りは、文科省の現役職員が文書の存在を認めているにもかかわらず、「確認できない」と逃げ続ける常盤豊高等教育局長に向けられた。

森議員「現職官僚は命がけで告発しているんですよ。このままでは法治国家でなくなる。局長、真実を言ってください。あれは本物でしょ。部下を見捨てるのですか」

森議員の迫真の追及に、委員会室のよどんだ空気は一変し、水を打ったようになった。

菅官房長官が、厳しく追及された定例会見の後、総理の執務室に駆け込んだことが確認されている。内廊下で総理と部屋がつながっている官房副長官の萩生田氏が今治市の資料について報告したことも確かだろう。

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