社員の7割が知的障害者。「日本理化学工業」が教えてくれたこと

 

「徳は孤ならず」

大山さんの知的障害者雇用への挑戦には次々と難関にぶち当たったが、その都度、大山さんの思いに共感して助けてくれる人々が現れた

ホワイトボードの普及によって、オフィスでのチョーク需要が激減したことで、日本理化学工業は危機に陥った。それを乗り越えるべく、大山さんはホワイト・ボードにも書ける、まったく粉のでないチョークの開発にとりかかった。

しかし、開発部門は一人のみ。毎日知恵を絞っても、なかなかうまくいかない。そんな時に、川崎市は「産学連携の助成金制度があるので、それを利用して商品開発をしてはどうか」と勧めてくれた。

共同開発の相手としては、早稲田大学が「障害者をたくさん雇用している会社ならばぜひ協力したい」と名乗りをあげてくれた。

専門家の協力を得られ、平成17(2005)年、まったく粉が出ずホワイトボードにも書ける新商品キット・パス」を完成。ビニールやガラス、鏡などにもチョークの書き味で書け、水拭きで簡単に消せる。

学校はもちろん、企業や病院、工場現場でも利用が広がっていった。このキット・パスで、子供たちが窓ガラスなどにも落書きができ、情操教育にも有効であることが分かった。しかも知的障害児も3歳までに感じる心を目覚めさせるような経験をさせると、障害の程度が改善される可能性があるとのことだ。

知的障害者が働ける喜びを味わえる企業作りを追求してきた過程で、再び知的障害の治療に役立つ新製品に辿り着いたことに、大山さんは不思議な」を感じた。

徳は孤ならず」という。知的障害者たちが「働ける喜び」を味わえる職場を作りたいという大山さんの志に共鳴して、様々な人々が力を貸してくれた。

我が国には、こういう人々があちこちに、たくさんいることを、ありがたく、誇りに思う。

文責:伊勢雅臣

image by: Shutterstock.com

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【著者】 伊勢雅臣 【発行周期】 週刊

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