トヨタ自動車のケース
トヨタは最高の「売上高」と「利益」を計上しています。創業者は豊田喜一郎氏で、「日本経済の柱となる産業を興したい」とはじめた企業であり、ターゲットとする「顧客」は不特定大多数です。そこでとられる戦略は「全面戦争」戦略で、勝ち抜くために一切のムダを排し且つ不可能を可能にしようとするもので、人材すべての才能・能力をムダにすることなく最高レベルで活かそうとする「総力戦」となります。
顧客に対する「マーケティング」
どんな「欲求・現実・価値」に焦点を絞るかということになりますが、不特定大多数のボリューム・ゾーンをターゲットとする場合、それは「安全、安心、値ごろ、燃費、走行性、使いやすさ、居住性」と総花的となりバランスよく一番にならなければならず、すべての要件を無駄なく、技術的優位性をもって実現されなければなりません。
従業員に対する「マーケティング」
少し一般的な予備知識として、2つの「欲求学説」について精通してください。
- マズローの欲求5段階説:人間は低次の欲求が満たされると、より高次の欲求を求める
- ハーズバークの動機付け衛生理論:不満の原因となる欲求とやる気を引き起こす欲求は相異なる
ただ、少し断っておかなければならないのは、生ものである現実を相手にする場合、基本の考え方のバックボーンを知ることが必要です。人間は複雑なので「熱意」「勇気」「知恵」「根気強さ」「愛情」といった「価値観」や「哲学」といった要素を抜きにして行うことはできないことを知っておくことが基本になります。
トヨタの場合、大規模な活力を引き出す必要があり、多くの人材の参画が必要で、その地域の多くの人たちの採用が必要となります。そのため、愛知県という土地柄を抜きにして人材獲得・活用を行うことは考えられません。
地域を生活基盤にする人たちの欲求は「堅実」「安定」であり、「雇用の保証」「安定した報酬」「コミュニティへの帰属」という気風があり、従業員に対する「マーケティング」つまり「インセンティブ(誘因)」はそれに順応したものとなります。
「コミュニティ」を守ろうとする気風の土地柄において、戦後のトヨタの存亡の危機と社員の一部の解雇という悪夢から強力な共同体意識が生まれました。グローバルな競争のなかで、自身の貢献で「世界一」にならなければ達成できないという「思い」が皮膚感覚になって行きました。
その経営のあり方は、非常識とも思える革新的なアイディアを賞賛し、存続のために「総力戦」を戦う仲間と相携えて考え抜いて実行することを支援することです。