服が売れない。日本のアパレル業界は、どこが時代遅れなのか?

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【書評】有名アパレルの社長らが明かす、業界を追い込んだ真犯人」という記事でも詳しく紹介した、日本のアパレル業界の苦境。メルマガ『j-fashion journal』の著者でファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、「問題を抱えるアパレル企業は、日本人特有の考え方にしがみ付いて倒産という最悪の結果を待つのではなく、企業の売却という最終的な決断も視野に入れて経営を見直すべきだ」と厳しい口調でアドバイスしています。

「M&Aによるアパレル再生の可能性」

1.不調のアパレルの状況

アパレル企業が苦境に陥るとは、具体的にどういうことだろう。

まず、予算に売上が届かなくなる。その結果、大量の在庫商品を抱える。アパレル企業の場合、そのシーズンに売れ残った商品が次のシーズンで売れるというケースはほとんどない。次のシーズンは、次のシーズンのトレンドが存在する。素材やカラー、デザインが微妙に変化するので、前年の商品は古くさく見える。

原価の範囲内で在庫商品が処分できれば、健全な状態である。原価割れの価格で処分すると損金が発生する。処分せずに、在庫のまま保管していれば利益になる。お金がないと処分ができないので在庫が溜まっているという企業も多い。在庫処分には資本が必要なのだ。

次に人材の問題。店舗流通からネット流通に軸が変わっていることは分かっていても、社内にITを理解する人材がいない。新たな人材を採用しようにも、予算が確保できない。

逆に事業部がなくなり、店舗を縮小しており、営業の人材は余っている。しかし、退職金を確保しなければ、早期退職を進めることもできない。

人材ミスマッチを解消するのも資本が必要なのだ。

モノの問題もある。ブランディングやデザインなど、付加価値を高めるには、それなりの人材をそろえ開発経費が必要だ。

良いテキスタイルを確保するには、良いテキスタイルメーカーと取引きしなければならない。縫製を良くしようと思えば、良い縫製工場と取引し、それなりの工賃を支払うことが必要だ。

業績が悪いと与信管理で取引することができない。どんな仕入れ先とも取引ができる状態になるには、経営が健全化しなければならないし、それには資本が必要である。

システムの問題も根が深い。多くの企業のシステムは継ぎ接ぎでごまかしてきたが、そろそろ限界であり、全体最適化を図らなければならない。もちろん、これも資本が必要だ。

とにかく、経営を改善するには資本が必要だ。それができないなら、現状のまま乗り切るしかないのだが、既にそれが限界に来ている。

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