中国は尖閣を狙わない。安倍官邸が捏造した「島嶼防衛論」の大嘘

 

それが今度は「尖閣が危ない」という別の話に

そんなことで、北の難民が離島へというホラ話は次第に下火になったが、そこに今度は、10年9月7日に尖閣領海で違法操業してした中国漁船の船長が海上保安庁の船に突っ込んで逮捕されるという事件が降って湧いた。こんなものは黙って送還してしまえばいいものを、菅内閣の対応は下手くそで、時間がかかっている間に騒ぎが大きくなって、日中双方で愛国派が激高して互いに中国人学校や日本人学校に嫌がらせをするといった、醜いヘイト合戦に発展した。

その中で、「北の難民が一部武装して」という話は「中国漁民に偽装した武装民兵が尖閣を占拠」という話に移し替えられていく。そのうち今度は、その武装民兵は先触れに過ぎず、その先導によって中国正規軍の特殊部隊やがては着上陸侵攻部隊が尖閣を占領するかもしれないではないか──と話が勝手に膨らんでいく。以下、仮想対話。

Q:しかし、そもそも中国が尖閣の岩礁を盗ったとして、国際法を無視し全世界を敵に回すだけでなく、現実に米中全面戦争となるリスクまで冒して一体何の利益があるのか

A:いや、だからそれは手始めで、次に与那国島を狙うだろう。

Q:与那国島に中国が全国益を賭けるに値する何かがあるだろうか。

A:いやいや、そこを足がかりに、島伝いに沖縄本島やがて本土に迫ってくる。そうなったら一大事だ。

Q:あのですね、島伝いに本島へ、本土へというタイプの悠長な作戦は第2次世界大戦で終わりなんですね。あの当時でも、島々に守備隊を事前配置して「島嶼防衛」を図るという構想は、沖縄本島を含めすべて失敗で、住民を巻き込んで全滅するということを繰り返した。ましてやミサイル時代の今ではナンセンスでしかない。半端な守備隊や申し訳程度のミサイル攻撃部隊など置いている方がかえってターゲットになりやすい

A:確かに守備隊方式は完全ではない。そこで水陸両用の米海兵隊タイプの着上陸侵攻部隊を創設して「奪回能力を身につけるのだ。

Q:「奪回」ということは、初戦でもう島は盗られてしまっているということだ。盗られないようにするのは無理だと最初から認めていることになる。何を言っているのか分からない。

A:実は、本当の目的は「島嶼防衛ではなくて中国攻撃」なのだ。米中が本格的な通常戦争に入った場合、自衛隊は中国側のいわゆる「第1防衛線」である九州西部・奄美・琉球諸島のラインで中国艦隊・航空部隊の太平洋進出を食い止めると共に、東シナ海を通る中国の海上輸送路を遮断する。そのため、地対空・地対艦攻撃ミサイルを配置して与那国水道、宮古海峡、大隅海峡を封鎖しなければならない。

Q:いやあ、北朝鮮の一部武装した難民が離島へというところから出発して、中国の一部武装した漁民が尖閣へ、そして尖閣だけでなく離島を守らなくては、いや守るのではなく実は攻撃するのだと。ずいぶん遠くまで来たような気がしますがねえ……。

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