もしも東京で大水害が起きたら…地下鉄から始まる「水没」の恐怖

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九州北部に甚大な被害をもたらした記録的な豪雨。世界的な気候変動が伝えられる中、首都圏が想定外の雨による災害に襲われないとも限りません。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では、著者でマンション管理士の廣田信子さんが二人のスペシャリストの声を紹介しつつ、いつ起きてもおかしくない「首都水没」についての危機意識の向上を訴えています。

東京の地下に洪水が流れこんだら…

こんにちは! 廣田信子です。

先週は、想像を越える豪雨の被害に合われた方々のニュースに言葉がありませんでした。どれほどの恐怖だったでしょう。ただただ祈るばかりでした。

ここは「川」、ここは「道」、ここは「宅地」なんて、人間が人工的に造った区分が、自然の前ではいかに無力かを思い知らされた気がしました。その自然の猛威は年々増しているように思えます。

ちょうど直前に、地域マネジメント学会のシンポジウムで、気象変動に伴う都市の水害の問題を扱ったばかりで水害対策について書かなければと思っていたところでしたが、リアルに今起こっていることを思うと、とても書けませんでした。でも、大事なことですので、ここできちんと書き留めておこうと思います。

シンポジウムの基調講演は、中央大学理工学部都市環境学科の山田正教授でした。先生のお話で気になったところを私なりにメモを起こします。


本来「土木工学科」といったものが、今は、大学の経営判断で「都市環境学科」という名称になって中身が分かりにくくなっている。土木工学が軽視されるのでは日本の国土を守れない。自分でものを考え、行動しなくなった社会の傾向に危機感を感じる。

水害対策も同じ。天気予報で危険が迫っているのが見えているのに誰も逃げない。2015年9月の鬼怒川決壊は記憶に新しいが、鬼怒川の堤防決壊は過去に何度も起きているのに、その危機意識が継承されていない

堤防が切れるのは、だいたい昔は川だったところの上に堤防が築かれているところ。その危険なところに家がたくさん建っている。

決壊時の映像をスマホで映したものが残っていて、研究者にはありがたいが、この状況は、本来撮影しているような場合じゃなく、すぐにでも逃げなくてはいけない状況。危機感が薄い。結局逃げ遅れて、自衛隊にヘリで救助してもらうことになる。

緊急放送をしても、標準語で言われても切迫感を感じない、ただ逃げろというだけでどこに逃げればいいのか言わなかったと非難があったが、自分の命を自分で守るという感覚があまりにも欠如している。

自分の地域の避難所ぐらい知っているのが当たり前。避難訓練に参加していれば分かる。緊急時に、いちいち地域別に避難所を知らせる放送することなんてできない。

自衛隊が、1,300人をヘリコプターで運んで救出した。8万人の人口の常総市で1,300人だ。もし東京で堤防が決壊したら、江戸川、江東、葛飾、隅田、足立の5区の180万人が避難しなければならない。いったい、どうやって避難させるのか。

自然災害に対する緊急時の判断に関しては今のように地方分権はダメ。命令を誰が出すか今の法律に書いてない。被害想定についても、過去の雨量の分析ではもう対応できない。地球温暖化による気象変動を盛り込んだ対策をしていないのは、世界の中で日本だけ

あまりの無関心に、もし、堤防が決壊したり、高潮が襲ったら、どれほどの地域が水没するか具体的に見せようということになった。

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●「首都圏における大規模水害の被害想定結果の概要」(※PDFが開きます)

最大級のものが来たらどうなるかを国民に見せて、これを防ぐにはどのくらいお金がかかるか、どのように街をつくれば被害を少なくできるかを表に出して議論していかなければならない。

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