元スナック店主が42歳から大逆転。回転寿司「根室花まる」ヒットの秘密

 

採算度外視で、見たこともないここだけのネタを提供する回転寿司店「根室花まる」。店の前は連日大行列で待ち時間は1時間以上。それでも「食べたい!」と思わせる魅力は新鮮なネタだけではなく、清水鉄志社長の回転寿司に賭ける熱い思いにありました。「テレビ東京『カンブリア宮殿』(mine)」は、放送内容を読むだけで分かるようにテキスト化して配信。スナック経営者から大転換した清水社長を突き動かしたという原動力とは?

絶対食べたくなる回転寿司~根室発!未体験の一皿300円

東京駅の前にそびえるのは、およそ90年前に建った中央郵便局のビルを建て替えた商業施設「キッテ」。館内には人気の店がずらりと並んでいる。そこに突然の大行列を発見した。待ち時間は実に1時間半。「根室花まるという回転寿司の店だ。

次々と売れて行く寿司は平均1皿300円程度とちょっと高めだが、どれも新鮮でおいしそうなものばかり。でも売りはそれだけではない。

威勢のいい掛け声でレーンに流し始めたのは、「あぶらがれい」(270円。季節や店舗によってネタの種類や価格は異なる)。ぷりぷりで肉厚の白身に、驚くほど脂がのったカレイの一種だという。「こまいの子醤油漬け」(270円)は、コマイという魚の卵を醤油漬けにしたもの。ここは未体験の味わいばかりだ。

「紅鮭すじこ醤油漬け」(345円)は、自家製の醤油で漬け込んだスジコ。プチプチの食感と独特の甘みも他にないものだ。さらに軍艦に乗った黒っぽいものは「たらばがに外子」(410円)。タラバガニの卵だという。そして職人さんが握り始めたのは、見たこともないここだけのネタ。カニのお腹の肉を使った珍味「たらばふんどし」(345円)だ。

寿司だけではない。「花咲蟹の鉄砲汁」(345円)で使うのは、北海道周辺でしか獲れない花咲蟹。コクと甘みがあり、絶品の出汁がとれるという。

実は見たことのないネタの多くは根室近海の魚。「根室花まる」は、根室にこだわり抜いた今までにない回転寿司で客の心を掴んでいるのだ。

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北海道の東端にある根室市。歯舞漁港に上がる魚は確かに他とはかなり違っている。オヒョウ、メヌケ、オオカミウオ……驚くほど珍しい魚が集まる理由はその環境にある。

北海道の北からオホーツク海へ流れ込む暖流。そして太平洋から来る親潮。根室の周辺は、そんな2つの海流が混ざり合う特殊な海域なのだ。市場関係者は「境目にあるので魚が豊富。日本とロシアの境界線を越えると拿捕されることもある。手のかかっていない水域なので、魚の来遊量が多いのもあると思います」と言う。

そんな根室に通い詰めるのは、「花まる」を運営する株式会社はなまるの“目利き”2人。仕入れを任される、元板前の商品開発課・藤谷一樹と仕入購買課・塩谷宗一郎だ。根室近隣の漁港をしらみつぶしに回り他にないうまい魚を買い付けていく。「市場に通っているうちに、会話の中から『こんなものがあるよ』と情報が出てくる」と言う。

この日、海沿いを車で走る2人に、珍しい魚が上がったとの情報が。すぐに急行したのは日高中央漁協。待っていたのは、鯛を超える味とも言われるマゾイだった。

量が少ないため、買い手がつかなかったという。早速さばいて、味を確認。「花まる」の味を決めてきた藤谷の評価は「うまい。『ぜひ』という感じです」。商談成立。量が少なくてもはなまるは他にはないおいしい魚の仕入れにこだわるのだ。

そんな2人が教えてくれた、とっておきの仕入れ先が「松田商店」。ところ狭しと並ぶ水槽は、はなまるに魚を卸している松田英照さんの生け簀だ。おいしい魚にするため、「普通の海水ではなく、水を少し変えて5日間から1週間くらい水槽に入れます。身痩せや身の緩みをなくすためです」(松田さん)と言う。東京の高級店にも直送している「松田商店」の噂を聞きつけ、はなまるも2年前から取引を始めた。

「一般の魚よりは価格が2~3割は高いと思うんです。逆に回転寿司という業態でよく使えるなと思って」(松田さん)

時には採算度外視でもうまい魚を仕入れる。そんな戦略が大行列を作り、その絶品の味で客を掴んで離さないのだ。

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