民進党・新代表に「枝野」はあっても「前原」はあり得ない理由

 

この時期に「前原代表」という選択はあり得ない

さてそれで9月前半にも代表選が行われ、今のところの予想では前原誠司=元代表と枝野幸男=元幹事長の対決になると言われているが、私の意見では、このタイミングで前原が代表に就くなど決してあってはならないことで、本人が辞退すべきだし、そうしないのなら何としても敗北させなければならない。なぜなら、彼は前々から「9条加憲論」を掲げていて、いま民進党がわざわざ前原を代表にするということは、安倍晋三首相の「9条加憲論に呼応し同調することをこちらから申し出るのと同じことになるからである。

前原は、昨年の代表選の際にもそれを声高に主張し、また今年5月3日に安倍首相が唐突に9条加憲論を持ち出した後でも、例えば『週刊東洋経済』17年5月13日号のインタビューで「私は改憲ではなく『加憲』を主張してきた。9条第3項、あるいは10条といった形で、自衛隊の存在を明記してはどうかと考えている」と述べている。

実は枝野も一種の9条加憲論を打ち上げたことがある。13年9月、彼が党憲法調査会長だった時に『文藝春秋』同年10月号に書いた「憲法9条、私ならこう変える」がそれで、現行9条(の1項、2項)はそのままで、そのあとに次のような条文を付け加えるとした。

■第9条の2 我が国に対して急迫不正の武力攻撃がなされ、これを排除するために他に適当な手段がない場合においては、必要最小限の範囲内で、我が国単独で、あるいは国際法規に基づき我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を守るために行動する他国と共同して、自衛権を行使することができる。

 

2 国際法規に基づき我が国の安全を守るために行動している他国の部隊に対して、急迫不正の武力攻撃がなされ、これを排除するために他に適当な手段がなく、かつ、我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全に重大かつ明白な影響を及ぼす場合においては、必要最小限の範囲内で、当該他国と共同して、自衛権を行使することができる。

 

3 内閣総理大臣は、前二項の自衛権に基づく実力行使のための組織の最高指揮官として、これを統括する。

 

4 前項の組織の活動については、事前に、又は特に緊急を要する場合には事後直ちに、国会の承認を得なければならない。

 

■第9条の3 我が国が加盟する普遍的国際機関(*1)によって実施され又は要請される国際的な平和及び安全の維持に必要な活動については、その正当かつ明確な意思決定に従い、かつ、国際法規に基づいて行われる場合に限り、これに参加し又は協力することができる。

 

2 前項の規定により、我が国が加盟する普遍的国際機関の要請を受けて国際的な平和及び安全の維持に必要な活動に協力する場合(*2)においては、その活動に対して急迫不正の武力攻撃がなされたときに限り、前条第1項及び第2項の規定の例により、その武力攻撃を排除するため必要最小限の自衛措置をとることができる。

 

3 第1項の活動への参加及び協力を実施するための組織については、前条第3項及び第4項の例による。

 

(*1)現状では国連のこと

(*2)多国籍軍やPKO等、国連軍創設以外の場合

つまり、9条の2では、「自衛権の行使」とそのための「実力行使のための組織」とを明記すると共に、その「自衛権」の範囲には日本防衛のために行動する米軍との共同も含まれるとしている。この場合の自衛権は個別的自衛権で、そこに米軍との共同も含まれるから集団的自衛権を解禁して「世界の果てまで一緒に行くかのようなことには歯止めをかけるという意味である。

また9条の3では、国連の平和・安全維持活動に自衛隊は参加することが出来、その際に武力攻撃がなされればそれを排除する自衛措置をとることができることを予め規定している。

これについて、「首相の案と似ているのではないか」と問われた枝野は、「それはまやかしだ。制定以来、蓄積されてきた9条の解釈を今後も維持するかどうかがポイントになる。……専守防衛で海外での武力行使はしないことを基本線にした私の案とは違う」と述べている(17年5月17日付毎日新聞)。また別のところでは、やはり「首相の考え方とは違うのか」と問われて、「全然違う」「問われているのは自衛隊を(憲法に)明記するかではない。従来の専守防衛という解釈が今後も維持されるかが最大の争点だ」と述べている(7月12日付日本経済新聞)。

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