台湾で大成功。日本の外食チェーンが「味を変えず」に成功できる理由

 

そんな激戦地に、なぜ日本の飲食店がわざわざ出店するのか。その答えを象徴する事例が「餃子の王将」です。

このメルマガでも以前触れたことがありますが、「餃子の王将」は中国の大連に出店したけれど失敗して撤退した経緯があります。そのとき、日本のマスコミは餃子の本場である中華圏で日本の餃子が勝負するなんて負けるに決まっているといった論調でした。王将も中国での失敗の後に台湾に進出するのは、かなり決断力を必要としたでしょう。しかし、蓋を開けてみれば、台湾1号店の売上は想定の2.6倍でした。

「餃子の王将」海外再挑戦は好調、台湾1号店の売り上げ想定の2.6倍

大連では失敗し、高雄では想定以上に成功した。この差はどこにあるのか。もちろん、日台間の歴史が大きく関係していると思われます。台湾の親日は日本統治時代から始まったことは今更なので詳述しませんが、台湾と日本の間にある互いへの信頼感の深さが、日本の飲食チェーン店の成功を導いています。

日本の店なら清潔安心安全美味しいといった先入観が台湾人にあるから、日本の店は無条件で大歓迎なのです。日本企業が数多く進出している大連ですが、ここまでの日本への信頼感はありません。

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台湾は日本のものなら無条件に受け入れる。だから味も変えてはいけないのです。日本の味、日本のサービス、日本の店内、日本のメニュー。台湾にいながら日本を味わえる。そこに価値観を見出すのが台湾人です。

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加えて、世界的な和食人気も、日本の飲食店が台湾で受ける素地となっています。中華(中国)料理は世界三大の人気食とも言われてきましたが、今では和食のほうが世界的には人気なのです。たとえば、スウェーデン第2の都市で中華料理店を営んでいる友人は、和食と中華料理のメニューを半々にしたそうです。というのも、中華だけでは客が入らないからです。中華料理は油っこく、中国の食材には不安もあるので、あっさりした健康食の和食が好まれているといいます。そこで自分で和食を研究したとのこと。

台湾でも大陸からやってきた外省人による中華料理店も多いのですが、最近ではやはりあっさりとした味が求められるようになっています。

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衣食住は、各民族の文化をもっとも表します。中国的な考えは、ユニークを否定してすべてを統一同化するものです。とくに現在の中国料理の特色は、なんでもかんでも香料を入れ、いかなる食材も同じ味にしてしまう。中華は短命食として世界的にも知られています。中国の皇帝は満漢全席という飲食習慣のなかで、平均寿命は38歳という短命さでした。

しかし日本食は純(旬)を大事にし、原味を殺さないことを重視します。インスタント食とは対極にあるので、時間をかけて賞味する食文化にもなっています。台湾人もそのことを知っていますので、こうした和食への憧れと信頼感が、たとえファストフードであっても、日本の飲食店を好む背景になっていると思われます。

そもそも、台湾人の食に対する意識は高く、健康志向も強くあります。塩分を控えるかわりにしっかり出汁を取って調理するなどといった調理法も、日本に共通する部分があります。だから、日本食は台湾人の舌にもピッタリ合うのです。

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