なぜ北極の氷が溶けると、日本の文明が衰退するのか?高城剛が解説

 

一方、大きな問題は、夏の北極海では、早くも2030年代後半には氷が完全になくなってしまう可能性があることです。氷河や氷床などの融解による海面上昇が、IPCCによる予測を上回ることは確実視されており、北極域の変化が中緯度地域の天候や東南アジアのモンスーンにまで影響するなど、世界的な大きな変化が起きると考えられておりますが、どれも予測不可能なのが実際のところです。

「北極圏監視評価プログラム(AMAP)」は、「北極域の気候は、新しい状態に移行しつつある」「根本的な転換」「新しい『型』になりつつある」と話し、現在の北極域が、これまでとはすでに別物であることを発表しています。いわば、「気候的ニューノーマル」です。

この北極を起点とする北半球の「ニューノーマル」は、北極海の氷減少が遠く離れた都市圏が多い東アジアの気候に大きな変化を与え、夏は灼熱と集中豪雨冬は厳冬となると予測されています。

夏に北極海の氷が解けると、氷より温度の高い海面が顔を出し、海の熱で大気が暖められます。その後、大気が冷えてくる11月頃、シベリア沿岸西部のバレンツ海やカラ海では大気へ熱が移り、その影響で12月ころの日本を含む極東が寒冷化へと向かうのです。

人類史を振り返ると、気候が温暖な地に文明が栄え、それが今日まで続いています。もし、日本のかつての繁栄が気候に大きく裏打ちされていたと仮定するならば、今後、100年も待たずに逆回転がはじまるかもしれません。まるで栄えた文明が時計を反対にまわすように戻っていく

本来、地球の気象変動への取り組みは、地球規模で対応すべき問題なのは間違いありませんが、現実的には「XXXXファースト」と呼ばれる、自国や各々地域の内へと向かうベクトルが主流になりつつあり、対応は大きく遅れている現状があります。

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