もう後がない。過去最大63億円赤字の「大塚家具」が迎える正念場

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正念場を迎える大塚家具の改革

2017年12月期の中間決算を分析すると、新生大塚家具が目指した構造改革はまだまだ軌道に乗っていないことが如実に数字に表れています。

本来であれば、この半期で売上高261億円、営業利益で3億円の赤字に留まることを見込んでいましたが、売り上げが伸び悩んだ影響で想定外の大きな赤字に転落。

事業資金を売り上げだけでは賄えないために、手許の現金を切り崩し、残高はこの6ヶ月間で39億円から22億円まで減少しています。

加えて、良好な関係を維持する目的で保有していた取引先の株式を25億円分売却して運転資金に充当。10億円弱の株式売却益を出して、最終赤字が膨らむのを防いでいます。

ただ、これまでの豊富な現金残高と投資有価証券を背景に、銀行との借入コミットメントラインはあるものの無借金経営は続き、当面の資金繰りには問題はないといっても過言ではないでしょう。

一方、久美子社長が創業者である父勝久氏から経営権奪取後、2年間で財務体質は急速に悪化し、もう後がない状況まで追い込まれつつあることも確かです。

そこで、8月10日に仮想現実(VR)で買い物ができるサービスを本格導入するなど、現状推し進めているバーチャルとリアル店舗を融合し、オムニチャネル化で成果を上げることも急ぐ必要がありますし、大型店舗の賃料など肥大化しているコストの無駄を適正化することによって固定費を引き下げ、現状500億円程度と思われる損益分岐点を400億円程度まで下げる努力なども必要でしょう。

ビジネスモデルの転換で成果を上げるのに時間がかかるのは仕方ないですが、「ハードランディング」で財務的、組織的に多大な負担を強いている現状、従業員や株主などの忍耐力も限界に達する可能性は高くなります。

2017年12月期は事業立て直しの引当金を計上して大幅な下方修正を発表するなど、今期の残りは事業基盤の整備に専念するようですが、果たして来年度は見事復活に導くことができるのでしょうか?

久美子社長の前回の改革も成果につながるまでに2年という期間を要した過去を踏まえれば、まだ結論を出すのは早計かもしれませんが、このままでは企業の存続さえ危ぶまれる状況に陥ることも十分に考えられるだけに、少なくとも来年度の黒字化は必達目標といっても過言ではないでしょう。

image by: Takkystock(MAG2 NEWS)

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【著者】 安部徹也 【発行周期】 ほぼ 週刊

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