世界のホンダが「ピラミッド組織」を嫌った明快な理由

 

少し飛躍しますが、ホンダの成長期の有り様でその雰囲気を見てみましょう。

最初に提言させていただきます。

人より秀でようとするならば人とは違うことを目指し行わなければ適えられることはありません

これは、ホンダの創業者であったヒューマニストだった本田宗一郎さんと、ロマンチストだった名参謀の副社長・藤沢武夫さんの「考え方」だと考えられます。

ホンダの生命線は「技術」です。それも、ソニーがそうだったように、誰もがまだ挑戦しなかったような独創の技術です。

因みに、ホンダのフィロソフィー

「人間尊重 1.自立 2.平等 3.信頼

「三つの喜び 1.買う喜び 2.売る喜び 3.創る喜び

で、総括すると、キャッチ・コピーの「パワー・オブ・ドリーム(夢の力)」となります。

優良企業といえども、トヨタもそんな時期があったのですが、ホンダも成長期の昭和29年には倒産の危機がありました。その時期を切り抜けて、自社も近代化をはからなければならないということで、講師を招いて活発に学習や研修を実施しました。

そんな折、副社長の藤沢さんは「非常に有意義だったと思います。みなさん、それをよく整理して考えてみてください。しかし、さきほどの講師の方の説に私は納得はしていないんですよ」と言うのです。何故なら「本田宗一郎」の強みである「技術を活かそうとするため、過去の事例である学者の学説を丸呑みする気などなかったからなのでしょう。

「組織」も、管理の源泉である「給与体系」も「勤務評定」もホンダの現状や目標に合うようにすべて従業員を巻き込んで改変してゆきました。ちょうどその頃は組合も設立されており、みんなを制度づくりに参画させて納得できる形で創り上げて行きました。評価される側の人間の意見も、多く籠められてでき上がったと言えます。

でき上がったのが、ホンダらしい「エキスパート」の能力を認めるもので、その雰囲気が全社的にできてきたのだそうです。ただし、おもしろいのは「エキスパート」を「マネジャー(班長)」にしたらよいかと言えば、そうではないという意見が大勢であったことも興味を惹かれます。

ホンダでは「管理」のツールである「賞・罰」をも、最も理解してもらわなければならない「従業員の参画」をもって作成されていったようです。それとは異なり、技術者が研究に没頭できる本田技術研究所」は、藤沢さんの強硬な提案のもとで設立されました。これは、非凡な本田宗一郎亡き後でも平凡な技術者の総力で独創的な技術の開発を実現させようと考えたからです。

藤沢さんは「ピラミッド組織を嫌いました。「ピラミッド組織」を吟味せずに採用したのでは、現場を知悉し活躍するスペシャリストの働き」が、現場を知らない管理者や過去を良しとするオールド・ボーイに疎外されて「コスト・ロスだけが発生して「効用など生まれないと考えてのことです。

何故なのかを必死で考える」から「何故なのかのヒントをつかむ」ことができるそうです。「分かれば」それが「知識」であり「力」となり、そこから「革新性創造性が生まれ出るのではと考える次第なのですが。

 

浅井良一この著者の記事一覧

戦略経営のためには、各業務部門のシステム化が必要です。またその各部門のシステムを、ミッションの実現のために有機的に結合させていかなければなりません。それと同時に正しい戦略経営の知識と知恵を身につけなければなりません。ここでは、よもやま話として基本的なマネジメントの話も併せて紹介します。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 戦略経営の「よもやま話」 』

【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け