社会を見渡してみれば、「ひとつの正解」が溢れています。
進学も、就職も、結婚も、出産も、出世も、みんなみんな「ひとつの正解」にを求め、走りたくもないのに走らされている。
ちょっとでも「正解」から外れると、負け組だのがんばりが足りないのだの揶揄され、「どうせ俺なんて……」と自己嫌悪に陥っていく。
10人いれば10とおりの価値観や生き方があって然るべきなのに、なんとも不思議なこと。
良い中学、良い高校、良い大学に行き、良い企業に就職するーーー。
学生の「大企業志向の高まり」も、「ひとつしか正解がない」という息苦しさの裏返しなんじゃないでしょうか。
「“正解”を手に入れない自分は、生きている意味がない」という強迫観念が、日本の20代、30代の若者の自殺が「先進国」で突出している背景にあるんじゃないでしょうか。
そして、50代が定年後を不安に思うのは、かつての「正解」のチケットが激減していることを察知する一方で、「ひょっとしたら運良く手に入るかもしれない」とはかない期待にすがっているからじゃないでしょうか。
……まさしく既得権益にしがみつく“ジジイ”。ジジイを量産する社会は、若者(子)が生きづらい社会でもある。そう考えることはできないでしょうか?
《このメルマガの連載が本になりました》
日経プレミアシリーズ『他人をバカにしたがる男たち』河合薫・著(日本経済新聞出版社)850円+税
河合薫さんの最新刊『他人をバカにすることで生きる男たち』が、日本経済新聞出版社より発売されました。本書は、メルマガ「デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』」の人気連載【他人をバカにすることで生きる男たち】を大幅に加筆・修正したもの。連載時代のオリジナル原稿は、メルマガのバックナンバーをご購入いただくと読むことができます。この機会にぜひご登録ください。
(河合薫さんからのメッセージ)『世の男性をいっせいに敵に回しそうなタイトルになっておりますが、内容は「オジさんとオバさんへの応援歌」です。これまでずっと書きたかった自分の専門分野を軸に、職場にはびこる「ジジイの壁」をあばき、知に基づく真の共感を得るべく言葉を綴りました』
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