少子化なんてどこ吹く風。「育児・保育」業界が衰えを見せぬ理由

 

競争のバトル──保育における破壊

クリステンセン教授は、医療における破壊は治療をより安価に、より便利にするとして、次の2つをあげています。

提供者レベルで起こる破壊:専門医と超専門医 → 家庭医・一般開業医 → 正看護師 → 自己治療

医療現場の破壊:総合病院 → 外来施設 → 診療所での治療 → 自宅での治療

これに倣えば、保育における破壊はサービスをより安価により便利にしてくれるはずです。

提供者レベルで起こる破壊:保育士 → (準保育士) → 家族

現場レベルの破壊:保育所 → (家庭的保育) → 家庭

ただし、かつてシッターの男が遺棄容疑で逮捕されるという悲しい事件があったように、保育サービスの信頼性を担保する仕組みが必要なのはいうまでもありません。なお、「準保育士」というのは、保育士でもなく家族でもない第三者という意味で使っています。

戦略的選択の評価──無提供者の活用と家庭的保育

無消費者に到達できる新市場型破壊的イノベ-ションとして、提供者レベルで起こる破壊と現場レベルの破壊の2つが考えられます。

まず、提供者レベルで起こる破壊──無提供者の活用。たとえば、認可外保育施設で子育て経験のある女性を積極的に採用する場合が該当します。

次に、現場レベルの破壊──家庭的保育。これには、保育ママベビーシッター子育て援助活動支援事業などが該当します。保育ママは家庭福祉員とも呼ばれ、自治体から保育を委託され、自宅の一部で乳幼児を預かる制度です。ベビーシッターは、保育サービスを提供する民間サービスです。遺棄容疑で逮捕されたベビーシッターの男は、インターネット上のサイトに登録していました。子育て援助活動支援事業はファミリー・サポート・センター事業とも呼ばれ、子どもを預けたい人と預かりたい人を有償でつなげる活動です。

参考文献

  • 吉見昌弘[編著]、斎藤裕[編著]『はじめて学ぶ保育原理』(北大路書房)
  • 『会社四季報 業界地図2017年版』(東洋経済新報社)
  • クレイトン・M・クリステンセン/スコット・D・アンソニー/エリック・A・ロス著 玉田俊平太解説 櫻井裕子訳『イノベーションの最終解』(翔泳社)

image by: Shutterstock

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クリステンセン教授たちが練り上げた「片づけるべき用事」の理論は、これまで不可能とされてきたイノベーションの予測を可能にし、その効果はアマゾンのベゾスらによっても確認されているといいます。3年目になる2018年からは内容を刷新し、従来のMBAツールとは一線を画すこの優れた理論を使い、各業界におけるイノベーションの可能性を探ります。これはイノベーションを生み出すための「思考実験」にもなります。なお各号はそれぞれ単独で完結(モジュール化)しているので、関心がある業界(企業)を取り上げた号を購読していただけます。

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