子猫は1日20h寝るってホンマでっか? 生物学者が教える睡眠の話

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イヌやネコなど、身近な動物を見ていると1日に何回も眠っていることに気づきます。そもそも、なぜヒトは基本的に1日に1回しか眠らないのでしょうか。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では、著者で早稲田大学教授・生物学者の池田清彦先生が、動物とヒトの眠りの違いを紹介しながら、「睡眠の不思議」についてわかりやすく解説しています。

動物の眠り、ヒトの眠り

私はロング・スリーパーの典型で、普段もよく眠るし、具合が悪い時もよく眠る。風邪などの命に係わるほどの重い病気でない場合一番の治療法はよく眠ることである。中には食べて治すと宣う人もいるが、本当に具合が悪い時は、食欲はないことが普通だ。病気が回復してきたので、食べられるようになったのだと思う。数日間、夜も昼もうつらうつらしていて、ふと目が覚めたら腹が減っているのに気が付いた、という経験をお持ちの方も多いと思うが、その時点で病気はあらかた治っているのである。

30歳代の終わりの頃、ジープを運転していて車ごと谷底に落ちたことがあった。その頃、私の視力は公式には2.0、 実際にはもっと良くて、車を運転しながら、外を飛んでいる1~2センチくらいの大きさのカミキリムシの種類が判別できたのである。珍しいカミキリムシが飛んでいれば車を止めて追いかける。普通種ならば、スルーするのだが、この時は種類がよくわからず、もっとよく見ようと思った刹那、車は谷底に向かって転落し始めていたのである。

この後の顛末はすでに書いたことがあるので詳しい経緯は省略するが、命は助かったものの、全身青痣だらけで37度~38度くらいの熱が続き、2週間ほど自宅で臥せっていたのである。昼も夜もうつらうつらしていて、腹が減ったらちょっと食べて、また寝て、という状態が続いて、青痣が徐々に黄色くなって薄れた頃、やっと普通の睡眠リズムに戻れた。

ところで、ヒトはなぜ1日に1回だけ眠ってあとはずっと起きているのか。たとえば、ネコは一日中眠ったり起きたりしている。眠る時間もヒトよりずっと長い。1日14時間も眠っているようだ。私はせいぜい8時間だから、ネコには到底かなわない。子猫に至っては20時間近くも眠っているらしい。ただし眠りが浅く、8割から9割近くはレム睡眠のようである。ヒトはレム睡眠の時に夢を見ていることが分かっているので、ネコも夢を見ているのかもしれないが、ネコに夢を見ているかどうか聞いても答えてくれないので、本当のことはわからない。

周りに敵だらけの野生動物は長い間ぐっすり眠ることは危険なので、すぐに起きられるように眠りが浅いのであろう。眠っているネコもよく観察すると耳だけは敏感に周囲の物音をキャッチしているように見える。異変に気づいたら、すぐに立ち上がって逃げられるように準備しているに違いない。ヒトはノンレム睡眠の割合が8割と極めて大きく、90分ごとに1回の短いレム睡眠が現れる。この周期を4~5回繰り返して目覚めるのがヒトの睡眠の一般的なパターンである。レム睡眠の時間は周期を繰り返すごとに少しずつ長くなって、朝方、目覚める直前に一番長くなる。レム睡眠の直後に目覚めると夢を見ていたと実感するが、短時間でもノンレム睡眠が入ると、前に見ていた夢はすっかり忘れてしまう。夢を見たことがないという人がいるが、見た夢を忘れているだけなのだ。

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