清潔で美しく健やかな毎日をめざす「花王」が続ける横綱級の努力

 

画期的商品をロングセラーに~客の心をつかむ改良はなぜ可能か

花王は、生み出した画期的商品を今度はロングセラーに変えていく

「育てていきながら大きくする。子供みたいなものですかね」(澤田)

「クイックルワイパー」は1994年、全く新しい掃除用品として売り出された。そんな画期的商品をロングセラーに育てるため、花王が行なったのは徹底的な改良だ。

例えばヘッドの部分。現在普及しているのは細かい凹凸がついたモデルだが、以前はもっとフラットだった。ヘッドの部分だけでも発売以来、改良を続け、ゴミの吸着率を上げ続けてきた。ちなみ最新モデルでは、ゴミをさらに吸着させるため、ヘッドの材質も変えていた。角の部分は柔らかくすることで、隅の細かいゴミまでキャッチできる。そして以前のものより17ミリ薄い28ミリになった厚み。この改良で、今まで掃除ができなかったわずか3センチの隙間も掃除できるようになった。

生み出した画期的商品をロングセラーに変える。その勝ちパターンは洗濯洗剤でも同様だ。まず、巨大な箱が当たり前だった時代に、その既存商品から大きく飛躍した、驚くほど小型の商品「アタック」を発売。話題の商品として一気に注目を集める。そしてそれを一時的なヒットに終わらせないため、毎年のように少しずつ改良し性能を上げロングセラーに育てていくのだ。

その「アタック」がさらに飛躍的な進化を遂げていた。それが業界初の濃縮液体タイプの「アタックネオ」。5億本を売るヒットの秘密は「初めて『すすぎ1回』を提案させていただいた」(ハウスホールド研究所・半田拓弥)こと。泡を洗い流すためのすすぎは2回が常識だったが、衣服に残りにくい泡に改良し、1回のすすぎで済むようにしたのだ。

今や「アタックネオの登場で新型の洗濯機にはすすぎ1回ボタンが標準装備されるまでになった。

客の心をがっちりつかむ改良はなぜ可能なのか。その秘密が、東京都墨田区にある花王すみだ事業場・生活者コミュニケーションセンターにある。

ここには客からの問い合わせや要望が実に年間22万件も寄せられる。入ってきた情報は即座にデータ化され翌朝には全国の花王の部署に届けられる仕組みだ。

和歌山市にあるハウスホールド研究所。柔軟剤の開発を担当する山根有介が、自分の担当した商品名を検索すると、最新の客の声が瞬時に閲覧できる。

「皆様のご意見を生かしていけたらなと思います。その種を見つけるためにも、このシステムを使っていろいろなお客様の声を聞く」(山根)

全社員が日々客の声と向き合い続けることで、客を感動させるほどの商品を生み出すことができるのだ。

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容器で感動させるプロ集団~1ミリの突起がヒットを生む

花王の改良への執念は容器にも及ぶ。例えば、画期的に使いやすくなったシャンプーの詰め替えパックだ。

花王はもう20年間、より使いやすい詰め替えパックをつくるため細かい改良を続けてきた。最大のテーマは、詰め替える時に入れにくくこぼしてしまうことの解消だった。

新型のパックでは、まず新しい詰め替えパックを真っ逆さまにドッキング。両手で折りたたみながら絞り出すと、あっという間に一滴も残さず楽々と詰め替えが完了する。

詰め替えパックを作ったのは包装容器開発研究所。様々な使いやすい容器の開発でヒット商品を支えてきた集団だ。どうやって最後の一滴まで詰め替えられるようにしたのか。稲川義則室長によれば、「ノズルの中に残さないという発想の設計だったんです」。

最大のネックは、詰め替えの最後にノズルの中に液体が残ってしまう現象。最後の一滴を残さない秘密はノズルの内側に作られた1ミリほどの出っ張りにあるという。そもそもノズルに液体が残ってしまう理由は、ノズルの内壁に液体が接触し付着してしまうこと。この出っ張りを作ることで、液体がノズルの内側に接触せずに流れ落ちるようになるのだ。

「実際に社長が詰め替えて、ノズルを見ると残っていなかった。『これだったらいいよ』と言ってくれました」(上席主任研究員・岩坪貢)

この詰め替え容器に切り替えて以降、シャンプー「エッセンシャル」の売り上げは1.2倍にアップしたという。会社一丸となった消費者目線の改良が感動的に便利な商品を生み出したのだ。

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