中国が、台湾の国際大会を妨害か。蔡政権を邪魔したい「統一派」の影

 

ユニバーシアードの開幕式では、デモ隊が選手入退場の入り口付近で騒いだため、選手が会場に入れず、開幕式では選手団なしの騎手だけが登場するといった事態になったのです。もちろん、台湾政府側も警官を6,000人配備して非常時に備えていましたが、それを突破してのデモ隊侵入でした。

このデモ隊の構成員は中国統一派であり、年金改革への反対というのは表面上のことで、本来の目的は独立志向の蔡政権へダメージを与えることだということは明白です。もちろん。証拠を挙げろと言われればいくらでもあります。台湾の自由時報によれば、「抗議デモの中に、中国国旗を掲げて『台湾はゴミだ』『どうせ蔡英文に(台湾)独立はできない』などと年金制度と関係のないスローガンを叫ぶ者がいたと報道されています。

自由時報はまた、「情報当局が抗議団体の背後に中国当局の介入があるとみている」とも報道しています。情報当局者によれば、年金制度改革に関する流言飛語が中国の無料通信アプリ「微信(WeChat)」や中国人が海外に設置したウェブサイトを通じて発信されており、抗議活動に中国当局との関係が疑われている中台統一派の政治団体中華統一促進党の所属員が動員されて人数不足を補っていると伝えています。総統府の林鶴明報道官は、同紙の報道について「評論しない」と言いつつも、否定はしませんでした。

「中華統一促進党」といえば、台南市にある八田與一の像の頭部を破壊した人物が所属していたことでも、メディアを騒がせたことは記憶に新しいところです。今回のデモの窓口となっていたのは、どうやら「中華統一党」の黄正忠という人物のようです。しかも、選手の入退場口で揉め事になったのは、デモ隊を率いる指示の誤解から生じたものだと言い訳しています。

大鬧世大運阻選手進場 反年改團體説是「誤會」

中国のこうした姑息な行為には台湾も慣れている蔡英文総統ですが、さすがに世界での晴れ舞台を台無しにされた怒りは収まらないようで、自身のFacebookで「このようなことで大会を破壊できると思うなら、台湾を見くびりすぎだ」と怒りを露わにしました。中国が台湾を陥れたいなら、もっと正々堂々と政治、経済、産業などの表舞台で競い合えばいいだろうと思いますが、正統法では何を取っても台湾に負けてしまうのが明白だからこそ姑息な手段にしか出られないのです。

中国国民党が70年にもわたって台湾を支配し続けてきた「華僑大国」の台湾統治は、2016年の選挙で崩壊しました。華僑による台湾統治のイデオロギーは、始めは「反共」でしたが、文革後は本場中国の社会主義体制も左のコミュニズムから右のファシズム資本主義体制に変わっていきました。

そして、台湾の華僑は90年代に入ると、「反共」をやめて中国政府と手を結び、台湾の「華僑王国」の延命を図りました。しかし、「華僑」による経済搾取に国民が反対するようになったのです。そのためのアメとムチを「華僑」政府は出しました。そのアメのひとつが年金政策でした。軍人、公務員、教員に限って、定年後の年金を高額に設定したのです。しかし、そんな不公平で高額な年金が続くわけがなく、制度改革は台湾政府にとって喫緊の課題でした。

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